【中国取材】見込み客を逃がすな! トヨタのクルマ販売最前線

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【中国取材】見込み客を逃がすな! トヨタのクルマ販売最前線
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メーカーではエンジニアが「よいクルマ」を目指し開発に勤しんでいるが、そのクルマも「よいディーラー、よいセールス」の手で売られねば魅力半減だ。顧客満足度や代替購入率をみても、ディーラーとセールスの質が占める部分は大きい。自動車ビジネスの“最前線”は販売なのである。

トヨタは古くからこの販売力を重視し、日本や北米をはじめ各国に強固な販売ネットワークを築いてきた。しかし、その実情は個々の販売会社やセールススタッフの「経験とノウハウ」や「努力」に負うところが大きかったのも事実である。販売の現場は、ベテランの力がものを言う世界でもある。トヨタは各市場で有力な販売会社とセールススタッフを確保し、囲い込むことで、他社がうらやむ販売力を築いてきた。

しかし、モータリゼーションの開始と急成長が同時に起こる中国では、セールススタッフの「ベテラン力」に頼ることができない。日本からの人的な支援にも限界がある。そこでディーラーの支援システムとして構築されたのが、顧客との総合的なリレーションを管理する「e-CRB」である。

ここでe-CRBについて、少し掘り下げて解説しよう。

CRBという概念は、日本におけるトヨタのテレマティクス「G-BOOK / G-Link」にもあり、日本からの視点だと"テレマティクスサービスの一部"のように見える。しかし、e-CRBの本質は「テレマティクスと連携する高度なCRMシステム」であり、カーナビ・クルマ支援のテレマティクスとは別に存在する最先端のディーラー支援システムだ。中国市場では、このe-CRBがトヨタのITサービスの主軸になっており、中国の「レクサス」と「広州トヨタ」各販売チャネル向けに大規模導入されている。

各販売チャネルに導入されているe-CRMでは、統合型顧客管理システムの「i-CROP」が、顧客ひとりひとりの情報を一括して管理している。その内容は徹底しており、新車の見積もりにぶらりとディーラーを訪れた時から始まり、実際のクルマの購入、その後のアフターマーケティングやサービス入庫まで、すべてのカーライフをケアするものだ。

さらにi-CROPの仕事は、顧客情報を記録・管理するだけでない。各顧客の情報の基づき、ディーラーの営業担当やCR(カスタマーリレーション)部門、サービス部門のスタッフに対して、その時々で最適な「顧客対応」を指示する役割を持っている。

例えば、見積もりを持ち帰った購入見込み客に対しては、“最も購買を促進しやすいタイミング”で最大2ヶ月・7回のコンタクトを取るべき「日時」を営業スタッフに指示する。また、新車購入をした顧客に対しては、“購入から数えて何日目にどのような手段でアフターフォローのコンタクトを取るか”、“お礼状をいつ発送するか”などをi-CROPが個別に指示を出す。

これらの指示は、i-CROPに接続された各スタッフのPC上に“その日の仕事(タスク)”として表示・達成確認がされるため、各部門がスムーズに連携でき、「連絡をし忘れた」といったミスも防げる。さらにi-CROPの指示内容は、トヨタが独自に分析・開発したトップセールスのノウハウや、顧客満足度を最大化するための理論に基づいてアルゴリズム化されている。

もう、おわかりだろう。

i-CROPをコアにしたe-CRBでは、綿密な顧客情報が統合的に管理されているだけでなく、これまでディーラーの「資産」として蓄積されていた販売の技術やノウハウが顧客情報とあわさり、すべてのディーラースタッフに対して“最高のテクニック”がシステマティックに提供されるのだ。各ディーラーのスタッフはi-CROPの指示を基本とし、その通りに行動することで、トップクラスの販売力を得ることができる。誤解を恐れずにいえば、e-CRBはベテラン力をフラット化し、すべてのスタッフのスキルを底上げするものだ。これこそが、中国市場におけるトヨタ車セールスの秘密兵器になっている。

《神尾寿》

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