商船三井(MOL)とJFEスチールは、5年間の調査研究を経て、原油タンカーのカーゴオイルタンクの劣化を抑制する新しい高耐食性厚鋼板(商品名=JFE-SIPTM-OT)を開発したと発表した。
今年11月竣工予定の超大型原油タンカーに、新耐食鋼をカーゴオイルタンクの底板と上甲板に全面的に採用する。上甲板への採用は世界初。
新開発鋼板は、特殊な元素を組み合わせることで、タンクの底板上での孔食速度を5分の1程度まで低減するなど大きな劣化抑制が可能で、タンク上甲板裏に発生する全面腐食にも、優れた防食性を示す。溶接性や加工性に関しては従来の鋼材と同等の性能を持ち、建造の際に特別な施工管理は不要。2年半ごとに行うドック時のメンテナンス作業の負荷低減が可能としている。
カーゴオイルタンクの底板は防食被膜に覆われているが、皮膜が欠けた場合には、孔食が発生する。その速度は最大で年間約4mmに達し、放置した場合、安全性への影響が懸念される。また、カーゴオイルタンクの上甲板裏には硫化水素などの影響により全面腐食が発生する。減耗が大きくなった場合には、船体構造の強度上に問題が生じることもある。
MOLとJFEは、船体の安全性向上、安全航行に対する信頼性向上を図ることを目的に、実船での腐食メカニズムを調査・解明し、新耐食鋼の開発に成功したとしている。今後、同耐食鋼の有効性を国際的に提示していく方針だ。