【伊東大厚のトラフィック計量学】道路の交通安全対策の評価

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【伊東大厚のトラフィック計量学】道路の交通安全対策の評価
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道路交通の安全目標

道路行政では、交通事故、渋滞、環境負荷の軽減などのアウトカム(成果)目標を指標化し対策の達成度を評価している。今回は、安全の観点から道路インフラ対策の評価について考えてみたい。

道路の交通安全についての政府目標は、2010年までに交通事故死者5500人以下、負傷者100万人以下というものだ。07年の実績は、それぞれ5744人(前年比608人減)、約103万人(同6万4000人減)となり、目標は前倒しで達成できそうだ。

国土交通省「道路行政の達成度報告書」では、死傷事故率(自動車の走行台kmあたりの交通事故件数)を指標としている。死傷事故率は02年の118件(/1億台km)から07年には109件に減少する見通しだ(表1)。死傷事故率は“交通事故の起きにくさ”が評価でき、事故の総数より国や地域間の比較がしやすいという特徴がある。

◆死傷事故率の高い日本

日本は、人口あたりの交通事故死者数は既に世界トップクラスなのだが、死傷事故率で評価すると欧米主要国の倍以上となり、事故に遭う確率が突出して高いことになってしまう(図1)。

まず、人やクルマの密度が高いことが要因として挙げられる。クルマと歩行者・自転車が混在する一般道路では、混雑や渋滞がひどいと事故に遭う確率は上がる。都市部で死傷事故率が高くなる傾向にあることは、これを裏付けるものだ(図2)。

次に自動車専用道路の利用水準の違いが挙げられる(図3)。自動車専用道路では歩行者が事故に遭うことは稀であり、インターチェンジ(立体交差)や中央分離帯は自動車どうしの事故を防ぐ。大雑把に言うと、自動車専用道路の事故率は一般道路の10分の1であり、利用率1ポイントのアップで1万件事故が減り死傷事故率は1件(/1億台km)改善する。

◆道路インフラ対策の効果を評価するには

近年の交通事故件数の減少は、道路インフラ対策のみならず、規制・取締り、クルマ対策など様々な対策によるものだ。インフラ対策の効果のみを切り出すことは難しいが、少なくとも事故多発地点やあんしん歩行エリア(図4)など対策箇所を限定して評価すべきだろう。

また、自動車専用道路の効果はもっと評価すべきだ。02 - 07年で交通事故は約10万件減ったが、自動車専用道路の利用率は2%程度アップしているため2割程度は貢献していると評価できる。効果を適確に表すためには、評価指標は改善の余地があると思う。

《伊東大厚》

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