【神尾寿のアンプラグド特別編】モバイルで200Mbpsオーバー!! ドコモがスーパー3Gを初公開…前編

自動車 テクノロジー カーナビ/カーオーディオ新製品
【神尾寿のアンプラグド特別編】モバイルで200Mbpsオーバー!! ドコモがスーパー3Gを初公開…前編
【神尾寿のアンプラグド特別編】モバイルで200Mbpsオーバー!! ドコモがスーパー3Gを初公開…前編 全 9 枚 拡大写真

既存の3Gインフラを拡張する形で展開可能

4月10日、NTTドコモが神奈川県横須賀市の「NTTドコモ R&Dセンタ」にて、研究開発中の次世代モバイル通信インフラ技術「スーパー3G」の実験環境を公開した。同技術が報道関係者向けに公開されるのは世界初となる。

スーパー3Gとは、現在主流の「3G (第3世代携帯電話)」の拡張技術であり、移動体通信方式の標準化組織である3GPPでは「LTE(Long Term Evolution)」という名で規格化が進められている。モバイル業界関係者の間では、3.9G(第3.9世代携帯電話)と呼ぶ人も多い。

携帯電話など移動体通信技術の次世代規格としては、「IMT-ADVANCED」と呼ばれる4G(第4世代携帯電話)の研究開発も行われているが、スーパー3Gは「4Gにつなげるためのワンステップという位置づけ」(NTTドコモ無線アクセス開発部長の尾上誠蔵氏)である。そのためスーパー3Gの商用化では、基地局設備やサービスエリアは、既存の3Gインフラを拡張する形で展開されていく予定だ。

◆最大通信速度は100Mbps以上、通信遅延も大幅削減

3GPPで合意されたスーパー3Gの要求条件は、「最大通信速度が下り100Mbps以上、上り50Mbps以上」、「制御遅延50ミリ秒以下、伝送遅延5ミリ秒以下」。またユーザー側の実効速度はHSPAと比べて「下りが平均3〜4倍、上りが平均3倍」、周波数利用効率は「下り3 - 4倍、上り2 - 3倍」となっている。現在、ドコモが展開している最新のFOMAサービスは、3.5G(第3.5世代携帯電話)に相当するが、これよりも大幅に速度が速い。

「実効速度や周波数利用効率の点で見ますと、最新のFOMAで利用している(技術仕様)『リリース5』(Rel.5)ではなく、HSUPAを含めた『リリース6』(Rel.6)を基準値にしての倍率になっています。実効速度で見れば、平均値が3〜4倍と大きく向上するほか、(基地局から離れた)セル端でも2〜3倍の速度向上が見込まれています」(尾上氏)

さらに周波数利用効率が向上することで、ビット単価も3分の1程度に抑えられます。スーパー3Gへの対応で当初の設備価格が上昇しても、それを上回る通信コスト削減効果が見込めます」(同)

端的に言えば、スーパー3Gでは現在主流の家庭用光ファイバーサービス(FTTH)と同等のスピードが実現し、その上、現在のFOMAよりも通信料金が下げられる余地が出てくる。通信容量が大幅に増えるため、これまでの携帯電話型(ハンドセット)端末だけでなく、PCやMID、PND、クルマ向けも含む通信モジュールなどにも「高速・定額・低価格」なモバイル通信サービスが提供される可能性が生まれるのだ。

◆クルマでの移動時に230Mbps以上を記録。遅延も小さい

スーパー3Gの公開実験は、NTTドコモ R&Dセンタ屋上にある基地局アンテナと、ドコモが所有する実験用移動端末車の間で通信を行うというもの。今のところ試験用の基地局アンテナは1基であり、屋外でのハンドオーバー実験はできない。NTTドコモ R&Dセンタがある「横須賀リサーチパーク(YRP)」周辺の公道を、試験用移動端末車で周回しての走行実験となった。

デモンストレーションで用いられたアプリケーションは、R&Dセンタ内とクルマとの双方向ビデオ伝送、実効速度の測定、HD動画のビデオストリーミング、pingによる遅延測定、リアルタイム対戦格闘ゲームの実演など。これらをスーパー3Gのアクセス環境で同時並行で動かす内容だった。

なお、今回の実験システムは標準策定されている「3GPP LTE仕様」に準拠しており、帯域幅は20MHz、下りマルチアンテナ技術は4×4のMIMO(Multiple Input Multiple Output)を採用していた。スーパー3Gの技術要件としては最も高い性能を引き出す仕様であり、「性能の上限を見るために、小型化よりもパフォーマンス重視のスペックにしている」(尾上氏)という。このため将来は“ケータイ”にまで小型化される端末側も、移動端末車の一角を占めるほど巨大なものになっていた。

筆者が同乗した走行試験では、車両速度は30 - 40km/h前後。このスピードで、スーパー3Gの実効速度は100 - 240Mbps前後で稼働していた。現在の携帯電話インフラが、最も速いものでも最大7.2Mbpsであることを考えれば、まさに「ケタ違い」のスピードである。走行中のクルマの中に、光ファイバー並みの通信インフラが用意されるようなものだ。HD動画伝送はきわめてスムーズであり、リアルタイム対戦格闘ゲームの動きも滑らかであった。これならばデジタル地図のフルダウンロードも苦にならないだろう。

一方、移動速度による影響だが、100km/h以下では「移動速度というより、地形や建物による影響の方が大きい」(技術説明員)。道路交通法の速度規制があるため、現時点では一般道の法定速度以上の試験は行われていないという。

「スーパー3Gの商用化段階では、当然ながら新幹線の速度は視野に入ります。ただ、その際も低速時にはスピードがしっかりと出て、高速移動環境ではそこそこの実効速度になるようなチューニングになるでしょう」(尾上氏)

もうひとつ、“クルマ視点”で注目なのが、スーパー3Gの伝送遅延の小ささだ。走行試験では上下双方向で11 - 20ミリ秒前後の反応速度であり、某リアルタイム対戦格闘ゲームが滑らかに“ネットワーク対戦”をしていた。衝突防止など安全目的のITSではDSRCなど専用通信インフラの利用が望ましいが、将来的なプローブカーの発展やPND向けのオンラインサービスでは、スーパー3Gの持つ遅延の小ささ・反応速度の向上は有用な機能向上になりそうだ。

《神尾寿》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  2. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  3. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  4. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
  5. 【BYD シーライオン7 新型試乗】全幅1925mmの堂々サイズも「心配無用」、快適性はまさに至れり尽くせり…島崎七生人
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  2. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
ランキングをもっと見る