【伊東大厚のトラフィック計量学】貨物モーダルシフトの可能性

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【伊東大厚のトラフィック計量学】貨物モーダルシフトの可能性
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貨物モーダルシフトとCO2

物流のCO2対策として、まず挙げられるのが貨物のモーダルシフトである。貨物モーダルシフトとは、大量輸送が可能な鉄道や船舶の輸送比率を上げ、自動車の貨物輸送を減らしCO2を削減しようというものだ。

輸送手段によって、CO2排出量はどの程度が異なるのだろうか。貨物1トンを1km運ぶ時のCO2排出量は、自動車261gに対し鉄道は20g、船舶は39gと、一桁の違いがある(図1)。モーダルシフトが進めば、相当量のCO2削減効果が得られる筈だ。

モーダルシフトは進んでいるのだろうか。まず、輸送量の推移を見てみよう。長期的には、全体の輸送量増加とともに自動車の輸送が急増し、鉄道は衰退している。直近の10年でも自動車は7ポイント近く増加し、06年度は60%に迫っている(図2)。これをみる限り、モーダルシフトは進んでいるとは言えない。

◆輸送距離との関係

物流の場合、貨物の積み替えがあるため、隣の駅まで電車で…ということはない。鉄道や船舶は長距離輸送が中心であり、駅や港に積み替え施設が必要となる。

距離帯ごとの輸送手段をみると、貨物の多くは短距離帯に集中しており、短距離は殆どが自動車となっている。また輸送トン数全体の約9割が自動車となるのは、長距離の場合でも端末の集配を自動車が担っていることもあるだろう(図3)。

鉄道や船舶が競争力を持ちはじめるのは、300kmを超えるあたりからだ。500km以上の長距離帯では自動車は4割を切り、鉄道や船舶が優位になるケースも増える。500kmとは、東京大阪間に相当する距離だ。

◆長距離帯ではモーダルシフトの兆し

積み替えのないドアトゥードアという利便性やコストなど、貨物輸送は自動車が優位にあるのが現状だが、モーダルシフトの可能性はあるだろうか。

この10年間の距離帯別自動車輸送割合の推移をみると、300km超の距離帯では自動車が頭打ちから減少に向かっている。特に500km以上の長距離帯では、03年度以降の減少幅も大きい(図4)。

これは、物流事業者や荷主企業によるモーダルシフトの取組みの成果といえるだろう。原油高の影響など直近の動向はまだ不明だが、引き続き、輸送割合や輸送距離の推移には注目したい。

《伊東大厚》

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