昭文社の100%子会社で、ナビ関連分野の事業を統括するキャンバスマップル。MAPPLEnaviの開発も同社が担当している。今回、開発現場の責任者として仕様全般のマネジメントを担当した企画制作部部長の吉橋誠氏に話を聞いた。
◆スクロールの軽さと操作性にひと工夫
----:ドラッグセレクトの他に、工夫されたポイントはありますか。
吉橋:ジャンルの絞り込みなど、ボタンを押してさらに選択する項目がある場合に、押したボタンの近くに選択項目を出しています。できるだけ指の移動をさせないよう工夫しました。MAPPLEnaviは、ドライバーが左手で使うシーンと、取り外して両手で抱えて使うシーンという2パターンの使い方を想定しています。両手で抱えて使った時に、PNDならではの使いやすさを感じてもらいたいですね。ユピテル『イエラ YPL430si』ではワンタッチで取り外すことができる構造にしていただいていますので、我々の意図がユーザーに伝わりやすいと感じています。
----:カーナビの地図スクロールは、矢印を押して移動するのと、Google Mapsのようにつかんで移動する方式の2種類がありますが。
吉橋:MAPPLEnaviのスクロール方式は3つあります。Google Mapsと同じようにつかんで移動する「ドラッグスクロール」、大きく動かしたいときに押しつづけて移動する「ハイパーマップスクロール」、そしてタッチすると中心に移動する「中心点ジャンプ」です。使い方に応じて見たい場所に応じて地図を動かせるようにしています。
----:すべてのスクロール方式が矛盾することなく同居していますね。スクロールがこれだけスムーズだと、地図になれた人は検索よりも地図をスクロールさせて目的地設定する、というケースが増えそうですね。
吉橋:わたし自身、地図から目的地設定をするタイプなので、地図スクロールには気を遣ったということもあります。目的地まで地図を動かしたら操作モードで「ここへ行く」と選び、表示されたルート候補を決定すれば即案内開始です。手間的にはあまり時間をかけずに目的地を設定できるはずです。
----:地図から目的地を選ぶ操作の使い勝手は、紙地図からMAPPLEnaviに移行する人には重要な要素だと思います。
◆フリーワード検索を採用、検索のしやすさにもこだわる
吉橋:急いでいる時にナビを使うことも多いですよね。MAPPLEnaviでは目的に対して、操作の数を減らすことができるよう心がけているつもりです。たとえば、フリーワード検索は手数を減らす手段のひとつだと思っています。
----:フリーワード検索の特長とは何でしょうか。
吉橋:例えば、中目黒駅に人を迎えに行かなければならないというとき、名称で検索すると、駅以外にも飲食店などの候補が出てきてしまい絞り込みが大変ですよね。カーナビを使い慣れた人なら、「交通のジャンルだから」と頭を切り換えてジャンル検索から目的地を探すでしょう。ですが、MAPPLEnaviならこのような頭の切り替えは必要なく、「中目黒」と入れれば中目黒駅が自動的に出るようになっています。
----:たしかにカーナビの目的地検索は癖を理解した慣れが必要ですからね。PNDユーザーには初めてカーナビを使うという人が多いと思うので、分かりやすい検索は歓迎です。
吉橋:たとえば、「新宿 & ラーメン」で検索すると新宿“駅”周辺のラーメン屋が出てきます。「新宿区 & ラーメン」と検索すれば新宿“区”内のラーメンがヒットします。単なる名称だけでなく、ジャンル名、POI詳細情報を結びつけて、「展望台」「夜景」「横浜」といった属性にインデックスを付けて検索できるようにしています。インデックスには優先順位がつけてありまして、たとえば駅を検索する頻度は統計的に多いですから、駅に関する項目は上位に引っかかるようにしています。
----:インターネットの検索エンジンのような使い勝手ですね。
吉橋吉崎:フリーワード検索では住所もそのまま入力することができますから、「柿の木坂」みたいな町名だけでも検索に引っかかります。
ハードウェアの制約をソフトウェアのチューニングで解決
----:今回のユピテル「イエラ」ではSDカードの2GBという制約がありますが、よくこれだけのデータを入れ込むことができましたね。
吉橋:開発当初から2GBを想定し開発ということでプログラムしていますから問題はありません。
容量に余裕があればもっとできることは増えるのですが、MAPPLE市街図が東名阪のエリア312都市で入っていますし、フリーワード検索も入っています。MAPPLEnaviとしては初めての製品ですし、まずやれることはやったかな、と感じています。ハードウエアになるべく負担をかけない仕様とすることで操作レスポンスも向上させていますので、たくさんの人に実際に手にとってスクロールなどの操作を体感していただければと思います。
----:最後に、MAPPLEnaviの進化はどこに向かうのか、将来的に考えていることがあればお話ください。
吉橋:現在は2GBメモリのストレージでMAPPLEnaviを実現しています。今後容量が増えるとまず、昭文社の財産である旅行ガイドやスポット情報などが写真をふくめてどんどん入りもっと特徴を出せます。また、PNDはいずれ、何らかの形で外部との連携機能をもつようになるでしょう。さらなるアイディアはいろいろ蓄積していますが、具体的にはまだお話しすることができません。今後にもご期待ください。
《聞き手:三浦和也》