激辛路線をひた走ってきた『インプレッサWRX STI』も、新型になって180度コンセプトをかえて登場してきた。硬い足とハイグリップなタイヤだけをたよりに、強引にタイムに挑む姿勢を捨てて、しなやかに路面をとらえることにしたようなのだ。
だから、ロール感はけして少なくない。前後左右に深く姿勢変化する。ステアリングの切れ味も、これまでよりも穏やかだ。だが、インプレッサが走りを捨てたわけではまったくない。むしろその逆で、走りの完成度は格段に高まっている。走行フィールが上質になったのだと思うのだ。
パワーを叩き付ければリアタイヤが激しくスライドし、それをセンサーして急激にアンダーに転じる、などといった荒々しい操縦性は影を潜め、つねに弱アンダーステアをキープするような、知的なフットワークなのである。
インプレッサはこれでプレミアムスポーツの仲間入りを果たした。こと走行性能に関してはそう断言する。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア・居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
木下隆之|レーシングドライバー、モータージャーナリスト
学生時代からモータースポーツをはじめ、出版社・編集部勤務を経て独立。クルマ好きの感動、思いを読者に伝えようとする。短編小説『ジェイズな奴ら』も上梓。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「心躍るモデルに高得点を与えるつもり」。