【ストラーダ HW830 レポート】「ハイエンドに近づいたミドルクラス」…商品企画担当者

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【ストラーダ HW830 レポート】「ハイエンドに近づいたミドルクラス」…商品企画担当者
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ワイドVGA採用や地デジチューナーを内蔵するなど、08年モデルのストラーダ ミドルクラスは、Fクラスの主要機能を受け継ぎながら魅力的な価格を実現した。Fクラスとミドルクラス、どのような差別化を行ったのか。パナソニック株式会社オートモーティブシステムズ社の商品企画チームでチームリーダーを務める田中智氏に話を聞いた。

◆コストと機能のバランスをどうとるか

----:今回の『ストラーダ CN-HW830D/HW800D』(以下、ミドルクラス)ではワイドVGA液晶や高音質再生のパーツの採用、ホームリンク機能への対応など、かなりハイエンドのFクラスに近づいた印象がありますね。
 
田中:ミドルクラスとFクラスの商品企画は同時にスタートしました。飽和しつつある国内カーナビマーケットの現状で、複数のラインナップを展開していくためには、Fクラスとミドルクラス双方を効率よく開発する必要があります。一方で、20万円前後の売れ筋モデルはとくに各社がしのぎを削っているマーケットであり、他社に負けないだけの機能を備えていなければなりません。コストと機能のバランスをどうとるか、が商品企画にあたってのポイントでした。
 
----:リヤモニタ接続用のD2端子、ドルビーデジタルの5.1chデコーダーそして、音声認識機能、ホームリンク機能の一部、ミュージック・スタイリストなどがFクラスとの違いですが、40GBのHDDやワイドVGA、ミキサーズ・ラボ監修による独自再生モード「音の匠」「いい音でスムーズトーク」の採用など、Fクラスから受け継がれた機能も数多くあります。Fクラスとミドルクラスのキャラクター差別化のポイントについてお聞かせ下さい。
 
田中:Fクラスはハイエンドならではの豊富な機能や拡張性を備えており、使い倒して楽しむユーザーや、とにかく高機能なナビゲーションが欲しいというユーザーに向けた商品です。一方、ミドルクラスを購入されるのはファミリーのミニバンユーザーが多く、ナビを買ってスピーカーを追加したり、リヤモニターを付けたりするようなカスタマイズ志向は弱い。そういうユーザー層を考慮したときに、どのような機能が必要かを吟味した結果ですね。

◆ターゲットユーザーの想定使用状況に合わせた機能を厳選

----:Fクラスの最大の特徴でもあった、ホームリンクはネットワークカメラ機能で対応しました。
 
田中:リンク機能についても拡張性のひとつの選択肢として考えました。数あるリンク機能の中で“なぜディモーラには非対応でネットワークカメラには対応したのか”という疑問が出るかもしれませんね。今年のストラーダのキャッチフレーズはFクラスをスタートに「家の中が見えるナビ」でしたから、このキャッチフレーズを端的に表しているのはネットワークカメラがいちばんであろうと。また、HW830についてはBluetoothを内蔵しています。リンク機能はソフトウエアによる対応ですからBluetoothを入れるならこの機能を入れない理由がない。いずれにせよ、どの機能を入れて、どの機能を外すかは非常に悩みましたが。
 
----:マスターテープの音を引き出す独自のイコライジングモードであるミキサーズ・ラボの「音の匠」「いい音でスムーズトーク」はミドルクラスにも引き続き採用され、オペアンプなど高音質パーツもFクラスと同等です。その一方、ミュージック・スタイリストは省かれました。このあたりの線引きは。
 
田中:ミュージック・スタイリストはFクラスのユーザー調査でも特に好評の機能です。しかし、ミドルクラスユーザーの中心を占めるファミリー層を想像したときに、リッピングした曲を自動で選別してDJをしてもらうより、子どもや奥さんが喜ぶような音楽ソースを普通にかける場面が多いのです。子どもは知らない曲を聞いてもおもしろがりませんし、ラジオを聞いているのと変わらないと思ってしまい退屈してしまいます。使用シーンを考えて、機能の要・不要を決めました。
 
私たちとしては新しい機種なのですからFクラスの同等、あるいはそれ以上の機能を実現したい。しかしターゲットユーザー層や価格が違う以上、Fクラスとの差別化を図るためには機能を整理するとともに、その分ユーザーの負担を減らす必要があります。しかし、ひとことで機能を削るといっても、インターフェース周りも再設計しなければなりませんから、開発側としては大変なのです。

◆更新地図ソフトを1回無償で提供

----:いちばんのトピックであるワイドVGA液晶の採用ですが、高精細画面の利点を生かして、余計なボタンは極力控えめに表示して、地図を広く見せるレイアウトになっていますね。
 
田中:地図画面にはできるだけ情報を詰め込みたいのですが、あまりボタン類が氾濫すると肝心なところが判別できず、ユーザーを困らせる原因になってしまいます。極力地図上の要素を減らすとともに、操作の階層構造を考えて使い勝手にも考慮しています。たとえばVICSの受信時刻情報は、ないと困りますが主張しすぎると邪魔です。したがって、常時表示させつつも非常に小さく表示させています。これだけ小さく見せられるのはワイドVGAならではですね。
 
----:私は縮小拡大のボタンが気が利いてていいな、と思いました。縮尺200mから50m・25mあたりを行き来する場合が多いのですが、何度もボタンを押すことなく、ワンタッチもしくはツータッチで見たい縮尺に切り替えることができるので、ストレスがたまりません。地図といえば、Fクラス、ミドルクラス双方で地図の無償バージョンアップサービスを実施していますね。
 
田中:ミドルクラスでは、ユーザー登録を条件として、2010年度版または2011年度版のいずれかの更新地図ソフトを無償で提供させていただきます。ストラーダを長く大事に使ってもらうために、サービスの一環として地図のサポートも実施することにしました。Webサイト登録時にどの年度版地図ディスクをもらうのか最初に選んでいただきます。

◆ワンセグ/フルセグでラインナップは作らない

----:次に価格帯についてお聞きます。Fクラスは希望小売価格で約35万円、ミドルクラスは24-25万円といったあたりですが、この設定は機能を選んでいってこの結果になったのか、それとも価格をあらかじめ決めて機能を選んでいったのか、どちらでしょう。
 
田中:ミドルクラスの価格帯をまず定めて、この価格で実現すべき機能を落とし込んでいったというカタチですね。ワイドVGAの採用やBluetoothの対応(HW830のみ)、さらに地デジチューナー内蔵と、従来モデルに比べてもコストパフォーマンスは確実に上がっていると思います。
 
----:他社ではワンセグのみの機種と12セグチューナーも付けたモデルでラインナップを作っているところもありますが、パナソニックではその路線はとらない、と。
 
田中:当社としては、フルセグとワンセグでラインナップをつくることは考えませんでしたね。ワイドVGAを採用したのなら、高精細な表現が生きる12セグでなければ、という思いもあります。
 
----:地デジチューナーを内蔵するメリットはどこにあるのでしょう。
 
田中:お客様にとっては、余分なハコがなくて済みますし、取り付け工賃もセーブことができます。わたくしどもや販売店にとっては余計なハーネスやケーブルを減らすことができるので、取り付けの省力化にもつながります。環境的な面で考えても構成する部品数は少ないに越したことはありません。内蔵する意味は十分にあります。

◆Bluetoothユニット内蔵モデルが予想以上に人気

----:Bluetooth対応モデルと非対応モデルを用意した理由についてもお聞かせ下さい。
 
田中:激戦区ですので、ミドルクラスにも複数のラインナップ展開が必要でした。そこで何で差別化するかというと、先ほども申し上げたようにワンセグのみ/フルセグ対応でラインナップをつくることはありえない。となると、差別ポイントはBluetoothになるだろう、と。Bluetoothあり/なしを作り分けることよって、逆にBluetooth対応モデルの機能にスポットが当てられます。商品出荷の出だしでは、Bluetooth対応モデルが半分近くを占めているそうです。Bluetoothモデルが思っていたよりも人気で、こちらとしても嬉しい驚きですね。

《まとめ・構成 北島友和》

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