【池原照雄の単眼複眼】トヨタ、緊急改善委ですでに1300億円のメド

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【池原照雄の単眼複眼】トヨタ、緊急改善委ですでに1300億円のメド
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徹底して経費を「始末」する

前期の過去最高益から連結営業利益の赤字へと、トヨタ自動車の業績はジェットコースターのように急落した。世界市場の収縮の凄まじさにあ然とするが、22日の同社の年末会見ではもうひとつのサプライズがあった。

業績悪化に対処し、11月に設置した緊急収益改善委員会(委員長・渡辺捷昭社長)による成果が今期(2009年3月期)で、すでに1300億円の改善に見通しが立ったというのだ。危機時には全社一丸となり、徹底して経費を始末する、この会社の伝統はしっかり生きている。

年末会見は会場費を節約するため、従来の名古屋の名門ホテルから名古屋駅前にそびえ立つ同社ビルに移した。いくつかの大会議場の仕切りを取り払ってしつらえた臨時の会見場だ。

◆電源切られたハンドドライヤー

そのフロアのトイレに行って、思わず頷いてしまった。ハンドドライヤーの電源が切られ、そこには『緊急収益確保対策』の張り紙があったのだ。紙には「当分の間、停止させていただきます 名古屋総務部」とある。

円でなく銭単位でコストを切り詰めるトヨタには当たり前のことなのだ。何より、社員一人ひとりに会社の実情を理解させるうえで、こうした身近なアクションは、効果的なメッセージになる。

緊急収益改善委員会は、「08年度と09年度の短期的な収益改善を目指す」(渡辺社長)もので、生産部門を含むあらゆる費用の低減と、売り上げの最大化に重点を置いている。これだけ世界の新車需要が落ち込むと、売り上げ落ち込みへの防戦は難しく、総費用低減が主体となる。

◆緊急VAも半年で500億円の効果

08年度の改善効果1300億円は、半年にも満たない期間での成果だ。これに加え、今春から取り組みを開始した緊急VA(価値分析)による原価低減も「半年で500億円の実行にめど」(同)が立った。今のペースが続くと09年度は、それぞれ倍の効果が期待できる。

経費面でのトヨタの「縮み志向」は、中部地域のみならず日本経済への影響も無視できないものの、創業以来の業績悪化なのだから止むを得ない。ここで中途半端な対応にとどめると、トヨタの業績回復に時間を要し、かえって国内景気の調整を長引かせることになる。

猛烈な勢いで上昇した原材料価格は原油価格の下落や円高などにより「落ち着く傾向」(木下光男副社長)となっている。09年度は緊急VAを除く、本来の原価低減活動でも成果が期待できる。今はまさに「愚直に、地道に、徹底的に」という渡辺イズムで前に進む時だ。

《池原照雄》

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