【トヨタ プリウス 新型発表】評論家16人の試乗評価

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【トヨタ プリウス 新型発表】評論家16人の試乗評価
【トヨタ プリウス 新型発表】評論家16人の試乗評価 全 21 枚 拡大写真

トヨタの新型『プリウス』が18日、発表された。とかくホンダの『インサイト』や価格面での話題で賑わうプリウスだが、乗った印象はどうなのか。一足先にプロトタイプに試乗した自動車評論家16人の試乗コメントをダイジェストでお届けする。

◆進化したTHS II

自動車評論家がもっとも評価するのが、ハイブリッドシステムの進化とそれにともなう燃費性能の向上だ。システムの名称こそ「THS II」と先代を引き継ぐが、排気量アップに伴う高速燃費の改善とシステムの効率向上により、先代の35.5km/リットルをしのぐ38.0km/リットル(いずれも10・15モード値)という世界トップレベルの燃費性能を達成。この燃費向上については絶賛状態。また、EVライクな先進性を実感できるという点でも“プリウスならでは”の特徴として評価を得た。

森口将之氏「リッター57km。原付バイクの燃費ではない。新型トヨタ『プリウス』のプロトタイプ試乗会で、富士スピードウェイの場内路をエコランして出した数字だ。プリウスおそるべし、だ」

西川淳氏「ちょい乗りでも実感できる低燃費にまずは脱帽だ(あくまでも車内表示を信じての話だけれど)」

吉田匠氏「モーターだけでも発進できるなど、ホンダの“IMA”よりモーターを積極的に使うトヨタの“THS II”ハイブリッド方式は、現行モデルがすでに新型インサイトをモード燃費で凌いでいる。そこにさらに、様々な改良を施した新型プリウスの燃費数値は、ボディの拡大にもかかわらず現行モデルを上回る」

家村浩明氏「何よりまず静かであり、そして“しっとり&なめらか”という乗り味がそれに加わって、低速から高速まで、サイズを感じさせない走行フィールが乗員を包む。モーターで走る電動車としてまず成立させ、そして必要に応じてエンジンも使う。つまり“主”が電動で、内燃機関を“従”にするという異種混合(ハイブリッド)の提案は、初代から10年を経た今日でもなお新鮮」

松下宏氏「停車時にほぼ確実にエンジンが停止し、発進時にモーターだけで静かに走り出していくとき、フルハイブリッドのクルマに乗っていることの良さを実感させられる。

◆ハンドリング性能の向上

新型では走行性能に大きく影響するプラットフォームを『オーリス』系のものへと一新。ハンドリング性能の向上についてもおおむね高い評価を得た。ただし、車格が上がったにも関わらずFFのベーシックなリアサスペンション形式であるトーションビームを採用していること、性能向上が足回りに専用品をおごる“スポーツパッケージ”に限られたことについては不満の声も。

岩貞るみこ氏「加速はいい。ブレーキは止まりきる直前にちょびっと違和感があるけれど、でも悪くない。ハンドリングもスムーズ。褒めるのが悔しい。悔しいけれどいい」

松田秀士氏「とにかく静かで乗り心地が良い。ショートサーキットランでは相変わらず重くバンプラバーに頼っているが、ロール剛性をアップしたサスペンションがしっかりと機能していた」

岡本幸一郎氏「操縦安定性が格段に増している。いわば、これまでが“ハイブリッドのわりにはまあまあ”という印象だったところが、“走りのいいコンパクトセダンで、実はハイブリッド”という感じ」

津々見友彦氏「フハンドリングはホンダ『インサイト』よりは大人しげだが、それでもしっかりした足で、サーキット走行も全く不満ない。ブレーキは電子制御のためぺダルタッチは癖があるが、慣れると不満はなく効きも良かった」

河村康彦氏「接地感が大幅に高まり、ステアリング中立付近の曖昧さも改善されたハンドリングのテイストにも感激をしたものの、実はそれは新設された“スポーツパッケージ”に限られたものだったのはちょっと興醒め」

萩原秀輝氏「リアサスがトーションビームと知ってガッカリしたもの。このサスは、スペース効率が高くコストが抑えら軽量化もできるので、ベーシックカーやコンパクトカー、あるいはファミリーカーにとってはメリットがある。試乗後も、リアサスの動きがスッキリしなかったので“ヤッパリね”という結論に」

◆ユーザーインターフェースの刷新

操作インターフェースや燃料の消費状態を一目で把握できるインジケーター類も新型では一新された。ハイブリッドシステムやトランスミッションなどやハード面での燃費向上策は突き詰めたところにまで来ている反面、ソフトウェア面すなわちドライバーの運転方法による燃費改善の余地は大きいとされる。ホンダ『インサイト』では「アンビエントメーター」を採用して“燃費のいい運転”を指導するUIを採用したが、プリウスにおいても同様の試みがなされている。

こもだきよし氏「ボクが一番気に入ったのは“ハイブリッドインジケーター”である。ひとつのメーターでアクセルペダルとブレーキペダルのエコドライブのための踏み方が把握できるのだ。ブレーキペダルを踏んでいても踏み込みが弱ければブレーキバッドを使わずに制動していることがわかる。この回生ブレーキを有効に使うことでハイブリッド車らしい効率のいいエコドライブができる」

神尾寿氏「特に高く評価したいのが、ハンドルのタッチセンサー付きボタンに触れると、センターメーターに透過して浮かび上がる“タッチトレーサーディスプレイ”だ。このデザイン性はとても高くて、しかも使いやすい」

千葉匠氏「個人的にいちばん気に入ったのは“タッチトレーサー”と呼ぶインターフェイスだ。ステアリング上のスイッチに触れると、それと同じ図がメーターに出現。オーディオやエアコンなどを、指先に視線を落とすことなく操作できる。新型『プリウス』の先進性を象徴する新技術だと言えるだろう」

◆インサイトとの比較

先に登場したホンダ『インサイト』は200万円を切る価格設定で登場し、4月の登録車販売台数トップを獲得。多数のバックオーダーを抱えるインサイトのヒットを目の当たりにしたトヨタは当初250万円クラスといわれていた新型の価格を205万円スタートとしてこれに対抗。トヨタとホンダ、そしてハイブリッド同士のライバルとして話題となっている両車だが、性格の違いはいかに。

吉田匠氏「サスペンションは適度にしなやかな印象で、運転感覚のスポーティさではインサイトに一歩を譲る反面、乗り心地の快適さに関してはプリウスがリードする。総じて、インサイトよりも大人なハイブリッドカーという印象だ」

神尾寿氏「 モーターの存在感を最小限に抑えて“ハイブリッドカーらしさのなさ"を打ち出すインサイトに対して、プリウスはモーターの存在感が強く“エコで新しいクルマであること”を主張する。消費者サイドの視座に立てば、プリウスのハイブリッドシステムは先進性が“わかりやすい”」

千葉匠氏「インサイトが“新時代のスタンダード”を目指したのに対し、“トヨタの最先端”であり続けるのがプリウス。…モノフォルムの空力プロポーションは(両車)似ているが、特徴的なのはボディ四隅のカタチだ。空気抵抗を下げるには、前輪の前にあまり絞り込まない面が必要。フロントコーナーを丸くできず、縦に折れ線を入れるとスタイリングをまとめやすい。ボディ側面の気流をスパッと剥離させるために、リヤコーナーにもエッジを立てたい。空力セオリーに則ったこのカタチを、トヨタは“エアロコーナー”と呼ぶ。あえて四隅を丸めて“空力やりました感”を抑えたインサイトとは、実はまったく対照的なデザイン。それぞれの開発意図の違いが、デザインに現れているのだ」

◆手放しではほめられない

パワートレーンにハンドリングなど、大幅な進化を果たしたプリウスだが、必ずしも高評価ばかりとは限らない。とくにハイブリッドカーとして画一化してしまったスタイリング、そして“エコ”のあり方を問われる大型化、さらには思い切った価格戦略が及ぼす影響について懸念する声も。

長嶋達人氏「エクステリアデザインはホンダ『インサイト』と同じように、さもデザイナーが“新時代のエコカーのボディラインはこれだ!”なんていうふうに思っているかのような個性の無さを感じさせられて、ちょっと嬉しくない。また、だだっ広い感じのダッシュボードは、車幅感覚がつかみ難いところがあり、これも好みではない」

松下宏氏「排気量の拡大が燃費の向上につながるという説明は理解できなくもないが、プリウスに限らずクルマが大きく重くなることに対して私は異議を唱え続けている。プリウスならなおのこと抑制を効かせることができなかったか」 

川上完氏「絶対的な性能は向上し、居住性も改善されてはいる。だが、プリウスというクルマはハイブリッド・システムを搭載したエコロジーカーであることを忘れてはならない。エコロジーカーと言うものは、あらゆる点で省エネルギーを優先するのだから、メーカーは勿論、ユーザーにも、いろいろな意味で、ある程度の我慢を要求する種類のクルマなのだ。むしろ、絶対的に台数が多く、稼働率も高い軽自動車や商業車にハイブリッド・システムを積極的に採用するのが本当だろう。今回のプリウスのエンジン排気量アップやボディサイズの拡大に積極的な意味は見出せ無かったというのが結論 」 

西川淳氏「(新型は)ハイブリッド車=『プリウス』として大幅な進化を果たしたといっていい。その技術力の高さは、日本のモノ作りの誇りだ。複雑すぎるメカニズムへの賛美は同時に、素朴な疑問も呼ぶ。本当にクルマはこのまま複雑に複雑を重ねていっていいの?! さらに、噂の激安価格設定になれば、他の乗用車(もちろんトヨタ車含む)に与える影響は多大で、ラインナップ再編もまた必至。 いろんな意味で、実用乗用車の価値観が再構築されることだろう」

《北島友和》

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