【池原照雄の単眼複眼】プリウス、強烈なライバルへの意識

自動車 ビジネス 企業動向
【池原照雄の単眼複眼】プリウス、強烈なライバルへの意識
【池原照雄の単眼複眼】プリウス、強烈なライバルへの意識 全 12 枚 拡大写真

インサイト対策(?)の「205万円」

発売日までに8万台突破と、空前の予約受注となったトヨタ自動車の『プリウス』が18日に発売された。元祖ハイブリッド車(HV)メーカーの底力を見せた格好だが、販売政策は最廉価車の価格設定など、ホンダの『インサイト』を強く意識したものとなった。いや、「強く」でなく「過剰に」という印象すら受ける。

プリウスは6グレードを用意し、価格は205万円から327万円。一番安い205万円の「L」は、まさにインサイト対策として急きょ設定したグレードといえる。本来は下から2番目に安い220万円の「S」がスターティングプライス車だったのだろう。それでも性能等を勘案すると前モデルより大幅に安くなっている。

発表会見で豊田章男副社長は、こうした価格設定と収益性について「利益はそこそこあるが、今はお客様に『買いたい』と思っていただけること」に留意したと語った。少なくとも205万円のグレードは収益面で厳しいという実情を示唆した。

「L」の実売は少量となりそうだが、3代目となって収益でも柱になるべきプリウスの価格戦略としては首を傾げてしまう。ちなみにホンダの最廉価モデル「G」(189万円)は、初期受注で4割も占め、中位価格の「L」と同じ比率だった。

◆トヨタは「ストロング」

用意された資料が品切れになる大盛況となった18日のプリウス発表会では、トヨタのHV方式を「ストロングハイブリッド」とし、ほかのHV方式を「マイルドハイブリッド」として、違いをコントで実演した。男性4人が2人乗り自転車2台に分かれて乗り、それぞれの2人がエンジンとモーターの役目を演じるというもの。

同じ内容は、一般向けのカタログにもイラストや図などで4ページにわたって紹介されている。マイルドハイブリッドの方は「架空のクルマです」と記載しているが、明らかにホンダのHV方式を想定したものだ。

「マイルドハイブリッド」といえば、かつて2001年にトヨタが「クラウン」に搭載して売り出した時の呼称でもある。今では生産中止となっているこのクラウンでは、モーターはアイドルストップ時のエアコンの作動や、アイドルストップからのエンジン起動、さらにごく初速の駆動アシストの役目を担っていた。

◆性能や装備で自ずと価格差は生じる

ホンダ方式を仮にマイルドと呼ぶにしても、クラウンに搭載したシステムとはモーターの役目が大きく異なっている。また、カタログにはマイルド方式は「モーターが小さいので、モーターだけでは走行できない」と明記している。

ところが、インサイトや『シビックハイブリッド』では、低速クルーズ時にエンジンを気筒休止し、モーターだけで走る場面もわずかではあるが存在する。カタログの別のページではマイルドは「モーターのみの走行は、ほとんどできない」と、説明が揺らいでいる。

プリウスとインサイトの違いはHV方式だけでなく、燃費性能や装備内容など多岐にわたり、それは自ずと価格差に反映される。顧客は賢明に比較検討してそれを理解し、選択するだろう。

ビジネスはそんなに甘いものではないかも知れないが、まずは自社製品の理念を真摯に顧客に訴えること。それがHV市場全体の着実な拡大につながるのではないか。

《池原照雄》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 【スズキ ソリオ 新型試乗】乗り心地と静粛性はクラストップ、だが「損をしている」と思うのは…中村孝仁
  2. 日産 リーフ 新型を発表、第3世代は航続600km超のクロスオーバーEV
  3. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  4. 日産 リーフ 新型の価格を予想する!…ベースは400万円台前半か
  5. サブコンが再評価される理由と純正ECU時代の新常識~カスタムHOW TO~
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  2. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  3. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  4. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  5. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
ランキングをもっと見る