新型の「W212」で強調されるのは、デザイン、先進性、安全性、環境適合性の4項目だ。抜群のフラット感など、すさまじくポテンシャルの高そうなシャシーはメルセデス自身、良くて当たり前と思っているはず。
それよりも今度の『Eクラス』では、電子制御シフトレバーのダイレクトセレクト、ドライバーの注意力低下を監視・警告するアテンションアシスト、ヘッドライトのハイ/ロー切り替え操作を自動化したアダプティブハイビームアシストといった先進装備を高く評価したい。ベンツとしてでなく、ハイテクカーとしてちょっと欲しくなるクルマだ。
ただ、使用する電波の関係で、いわゆるレーダークルーズやプリクラッシュセーフティに相当するディストロニックプラスや、ボルボ等でおなじみの斜め後ろのクルマを感知するブラインドスポットアシストの導入が遅れるのは残念。またエクステリアに関しても、多くの日本人がEクラスに期待するのは、複雑なプレスラインが織り込まれた最新トレンドのデザインより、おそらくもっとシンプルで威風堂々としたスタイリングのように思う。
安全性は文句のないところだが、環境適合性に関してはガソリンエンジンや7ATが基本的に先代と同じであり、実質的にディーゼル車が排除されている日本ではちょっと厳しい。0.25という優れた空力性能などによって、例えば試乗した「E350」の場合は、10・15モード燃費が先代の8.6km/リットルから9.5km/リットルに向上しているが、やはりハイブリッド勢には遠く及ばない。燃費は年内に登場するという1.8リットル4気筒直噴ターボに乞うご期待というところか。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
水野誠志朗|自動車ライター
97年に新車試乗記を中心とするウェブマガジン「MOTOR DAYS」を立ち上げ、以来毎週試乗記をアップし、現在550台を超える試乗記を公開。「クルマはやがてはロボットになる」として、走りだけでなく利便性・安全・エコの面から新たなクルマのあり方を提言している。名古屋市在住。