【池原照雄の単眼複眼】業績の上方修正相次ぐが、問題は…

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北米好調の富士重工は黒字転換へ

自動車メーカー各社の第2四半期累計決算は2日までに7社が発表し、全社が期首予想を上回った。また、同日発表された10月の国内新車販売(軽自動車含む)は2か月連続のプラスとなり、業界に明るい光りが差し込み始めた。

しかし、このまま来期以降も業績が順調な回復軌道に乗るかは未知数な部分が多い。国内外の新車需要は、スクラップインセンティブによる各国政府の経済対策に支えられてきたからだ。決算発表の席上でも各社トップからは、慎重な見解が相次いでいる。

第2四半期業績とともに発表された2010年3月期の通期予想は、上期の業績改善を反映して見直しが相次いだ。最終損益の黒字転換という期首予想を据え置いた三菱自動車工業を除く6社全てが上方修正した。

当初から黒字を見込んでいたホンダ、スズキ、ダイハツ工業が利益見通しを増額したほか、上期の北米販売が2ケタ増と孤軍奮闘している富士重工業は、営業利益10億円と若干ながら黒字転換に修正した。

◆インセンティブの息切れをどう乗り越える

各社の下期の為替レートは円高方向に置いており、またスズキのように下期の利益予想は期首時点のものを据え置くなど、全般的に慎重に予想を積み上げている。このため、各社の通期予想も上ぶれる可能性が高い。

問題はその先だ。自動車産業の世界同時不況を克服するため、各国政府が実施した新車購入のインセンティブが今後、順次打ち切りとなる。先進諸国では最も効果的だったドイツは9月までに終了、計画では年末にかけて欧州諸国や中国でも終わる。日本もエコカー補助金は09年度末までだ。

米国では7 - 8月の実施後、市場はあっという間に元の冷え込みに戻った。それだけに各社首脳は下期から来期にかけては「インセンティブの息切れを乗り越えて、どう販売につなげるかが課題」(スズキの鈴木修会長兼社長)と、強調する。

◆身をかがめた構えが続く

マツダの山内孝社長も「欧州では安売り合戦となっている国もある。(経営環境は)今期も厳しいが来期はもっと厳しくなる可能性がある」と指摘する。多くの自動車メーカーの収益源となっていた米国市場も回復の弱さを露呈している。

ホンダの近藤広一副社長は、「09年度半ばには回復の兆しが見えると踏んでいたが、なかなか見えてこない」とし、期待値も含めて「10年なかば」と回復期の後ズレは避けられないと見る。米国の全体需要については09年暦年も09年度も1000万台規模に低迷すると読んでいる。

各社の足元の業績回復は、販売費を中心とした固定費の削減や設備投資・研究開発費の抑制などに思い切った手を打ったことも効いている。身をかがめて昨年来の嵐を凌いだ格好だ。開発投資の抑制には限界もあるが、来期に向けてもしばらくはそうした構えを取らざるを得ない情勢だ。

《池原照雄》

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