【神尾寿のアンプラグド試乗編】走り・使い勝手・エコのバランス…ゴルフ ヴァリアント

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ゴルフ・ヴァリアント
ゴルフ・ヴァリアント 全 10 枚 拡大写真

2009年、自動車業界のキーワードが「エコ」であったことは、もはや異論がないだろう。

『プリウス』vs『インサイト』のハイブリッドカー決戦は言うに及ばず、多くの自動車メーカーが様々なエコ技術を競い、世間の耳目も“燃費のよさ”に集中した。特に日本市場では「ハイブリッド」と「EV」が流行語のようになった。

しかし、エコカーの基本技術はハイブリッドとEVだけではない。エンジン(内燃機関)とトランスミッション(動力伝達装置)の技術革新も続いており、こうした“モーターに頼らないエコ”も注目である。とりわけ独フォルクスワーゲンはこの分野の先駆者であり、リーディングカンパニーだ。同社は小排気量+ターボの「TSI」と、MTベースの高効率なトランスミッション「DSG」のふたつの環境技術により、エコで、しかも走らせて楽しいクルマ作りを積極的に行っている。フォルクスワーゲンもまた、“エコカー”の代表的なメーカーなのだ。

そのフォルクスワーゲンが17日、『ゴルフ』の派生車種「ゴルフヴァリアント」をモデルチェンジした。同車はゴルフの5ドアステーションワゴンバージョンに位置し、ラゲージルームの拡大とロングドライブ向けの装備を充実させたもの。ゴルフ譲りのエコで高品質な走りと、ステーションワゴンならではの使い勝手のよさを一台にまとめたクルマである。

そこで今回のアンプラグドは特別編として、新型ゴルフヴァリアント国内試乗会から、この新型車の特長と魅力についてレポートする。

◆ライフステージの変化に強いステーションワゴン

ステーションワゴンは、実は“お買い得なクルマ”である。

ベース車に比べてそれほどサイズが拡大していないので、燃費や取り回しで損をすることなく、走って楽しい。ベース車よりちょっと高級という位置づけから、価格のプラスα以上に装備品が充実。さらにラゲージルームが大きいから、恋人同士・夫婦のドライブ旅行から、子どもと一緒に出かけるファミリーユースまでそつなくこなす。特にベビーカーや補助輪付き自転車が気軽に積めるのはポイントが高いだろう。

一言でいえば、ステーションワゴンはライフステージの変化に強い。だから、長く満足して乗ることができる。とりわけライフステージ変化が著しい30 - 40代にユーザー層にとって、ステーションワゴンは積極的に検討する価値がある。

これまでの先代ゴルフヴァリアントの販売実績を見ても、この傾向は顕著だ。フォルクスワーゲンによると、先代ゴルフヴァリアントは1万5000台強が売れた「ゴルフ、ポロに続くフォルクスワーゲンの人気モデルにして中核車種」(説明員)だが、とりわけ購入者層で多かったのが30 - 40代だという。ゴルフのステーションワゴンは、手頃なサイズと燃費のよさ、高い安全性能、質実剛健なデザインなどが魅力であり、そういった部分が高く評価されたようだ。

◆「エコ」・「走り」・「使い勝手」のバランスが魅力

それでは新型ゴルフヴァリアントを見てみよう。

同車のセールスポイントは、ベース車ゴルフの特長である「エコ(環境性能の高さ)」と「走りのよさ」に加えて、ラゲージルーム拡大や装備充実による「使い勝手のよさ」がある。これらが高い次元でバランスしているのが、最大の魅力と言えるだろう。

まず、「エコ」の部分だが、ここはフォルクスワーゲンが近年推進する“ダウンサイジングコンセプト”が柱になっている。小排気量+過給器(ターボとスーパーチャージャー)を組み合わせた最新エンジン「TSI」と、MT譲りの高効率性と2ペダル・自動変速の扱いやすさを融合した「DSG」により、これまでのエンジンとATの組み合わせよりも低燃費・エコの性能を向上している。このコンセプトはゴルフヴァリアントにも適用されており、ベーシックグレードの「ゴルフヴァリアントTSIトレンドライン」(272万円)では、16.8Km/リットルの低燃費を実現。装備が充実した「TSIコンフォートライン」(322万円)が16.2Km/リットル、パワフルでスポーティな走りを目指した「TSIスポーツライン」(383万円)でも12.2Km/リットルの燃費である。また全グレードがエコカー購入補助金に対応している。

そして、もうひとつゴルフヴァリアントの魅力が「走りのよさ」だ。これはTSI+DSGの特長でもあるのだが、フォルスワーゲンのエコ技術は、エンジンのパワー感やダイレクト感を犠牲にしないよう腐心されている。

筆者は今回、ゴルフヴァリアントの「TSIトレンドライン」と「TSIコンフォートライン」に試乗したが、どちらも排気量1.4リットルの小排気量エンジンとは信じられないほどのトルクがあり、中間加速も鋭い。7速DSGの変速はとてもスムーズであり、応答性がよく、ベーシックグレードのTSIトレンドラインでも“もっさり”したところは微塵もなかった。またバッテリーやモーターという重量物を搭載しないことも有利に働き、コーナリング時の挙動はハイブリッドカーよりも素直で好ましい。エコなファミリーカーという顔を持ちながら、ロングドライブから峠道までしっかりと、楽しく走ることができるだろう。

一方、「使い勝手」では、ステーションワゴンならでの魅力であるラゲージルームが特長になるだろう。ゴルフヴァリアントの荷室は基本容量が505リットルで、内面の張り出しも少なく、使い勝手はかなりよい。さらに後席を倒せば1495リットルの大容量空間が生まれる。これだけあればIKEAで家具を買って持ち帰る、といった場面にも十分に対応できるだろう。ラゲージルームの機能としては、スライディングカバーやハーティションネットが標準で用意されており、使い勝手や安全性の面でも合格点。贅沢をいえば、BMWのステーションワゴンのようにハッチドアの窓だけ開閉できる仕組みが欲しかったくらいである。

《神尾寿》

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