【井元康一郎のビフォーアフター】中国の新たなエコカー振興策

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11月24日に開幕した広州モーターショーが大盛況ぶりを見せ、2009年の新車販売台数が国別で世界一となることが確実となるなど、自動車の一大市場という地位を手に入れつつある中国。その中国が、新たなエコカー振興策を打ち出す動きを見せている。

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「上海市は2010年から日本円で40万円ほどかかるナンバープレート取得費用を、エコカーに関しては無料にするという方針を発表しましたが、他の自治体でも次々にその動きへの追随が始まっています。今後、中国でもエコカーが存在感を強めそうです」(日系自動車メーカー関係者)

中国のエコカー優遇政策は、日本のエコカー減税とはスタンスがかなり異なる。ナンバープレート無料化に先駆けて、自動車取得税の減税も行われているが、優遇対象となるのは燃料消費の絶対量が少ないクルマが中心。

中国共産党関係者は、自国の経済成長に伴う原油消費の急激な増大が自縄自縛を招くことに警戒感を持っている。そのため、エネルギーの使用量が絶対的に少ないクルマに恩恵を与えるという非常に明快な措置を取っているのである。

日本のエコカー減税の場合、車両重量と10・15モード燃費の相関で減税の度合いが判断される。燃費の良いコンパクトカーより大型車のほうが減税率が大きいという逆転現象は数知れず、場合によっては同じクルマでも、重くて燃費の悪い4WDは減税対象、2WDは対象外といったケースすらある。

国交省や環境省など、官庁が減税のシステムを考えると、どうしてもこのようにおかしなものになる。モータリゼーションでは欧米はおろか日本よりはるかに後発の中国のほうが、ずっと明快なシステムを構築しているというのは残念なところだ。政府はエコカーへの買い換え補助を2010年9月まで延長するという方針を示しているが、減税対象の中身については見直しが求められるところだ。

さて、冒頭のエコカーのナンバー取得費用の減免制度だが、日本メーカーにとっても商機と言える。対象となるのはハイブリッドカー、EV、メタノール車、天然ガス車、バイオディーゼル車などが想定されるが、中でも台数面での貢献度が高いとみられるのは、すでにエンドユーザー向け商品として成熟が進んでいるハイブリッドカーだ。

今日、ハイブリッドカーの世界シェアは圧倒的首位のトヨタ、そのトヨタに大きく差をつけられながら追うホンダで世界販売の大半を占めている。が、『プリウス』が日本市場で20万台もの初期受注が集まるほどの爆発的なブームを巻き起こしたのに対し、欧州市場ではドイツ、フランスなどの主要国でせいぜい月販数百台レベルで推移しているのが実情。

「それでも前年同月比では数倍に増えていますが、発売前に持っていた期待を思うと、空振りに近い」あるトヨタ関係者は、胸の内をこう明かす。欧州でのハイブリッドカービジネスがうまくいっていないのはホンダも同様。両モデルとも、結局日本市場が最大市場となっているのが現状だ。

中国市場での優遇策は、ハイブリッドカーをさらにグローバル商品に育てる好機だ。トヨタはすでにプリウスを中国で現地生産しており、増産にはすぐに対応できる。ホンダは『シビックハイブリッド』を販売しているが、工場での作りやすさを設計段階から考慮した新世代の『インサイト』の投入にはまだ時間がかかる見通し。

トヨタは中国市場では苦戦気味だが、今後、エコカー優遇政策を追い風にシェアを伸ばす可能性がある。反対に、コンパクトカーの販売が好調なホンダは、エコカー優遇策の恩恵に充分に浴せるよう、展開を早める必要がある。

また、この2社を追う形で日産、フォルクスワーゲン、ダイムラーなど、多くのメーカーがエコカーを中国市場に投入してくることが予想される。とりわけ、中国でトップシェアを持つフォルクスワーゲンは、市販車はまだリリースしていないものの、「ハイブリッドカーに必要な技術力は非常に高い」(日系メーカーの乗用車開発担当者)という。さらにハイブリッドカーと同様、すぐに投入可能なエコカー技術、クリーンディーゼルを有していることもあり、日本陣営にとって強敵となりそうだ。

このように、今後は自動車販売だけでなく、環境技術を巡るバトルについても中国市場は一大中心地となる可能性がある。巧みな環境行政によって、世界の最新のエコカー技術を自国に誘導し、ひいては技術の中国企業への移転をも視野に入れる中国政府。先進諸国、なかでも政局混乱と省庁の立案能力の低下で政治力が落ちに落ちている日本がこの流れに飲み込まれないためには、根本から国家戦略を練り直す必要があろう。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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