【池原照雄の単眼複眼】改正特商法は足かせではなく好機

自動車 ビジネス 国内マーケット

断られると再勧誘は禁止だが…

今月1日から訪問販売やクレジット契約の規制を強化した改正特定商取引法(特商法)と改正割賦販売法(割販法)が施行された。高齢者を中心に被害が多い悪徳商法から消費者を守るためだが、自動車販売業界も訪問活動の制約を受けたり、ローン手続きに煩雑さが加わったりと影響を受ける。

まっとうなビジネスを行っている業界には迷惑な規制だ。自動車はすでにユーザーが店頭に赴いて品定めする販売が主体となっているものの、ユーザーを維持・獲得するためには訪問活動も依然として重要。新しい規制を逸脱しないよう留意が必要だが、営業担当者が過度に萎縮する恐れもある。店長や担当マネジャーには腕の見せ所ともなる。

改正特商法では、1度訪問して断られた消費者への勧誘を禁止したのがポイントだ。ただし、数か月から1年の期間を置けば再度の勧誘はできる。一方の改正割販法では、ローン契約の際などに消費者の支払い能力調査が義務付けられた。

◆訪問販売主体の良き時代

自動車販売業界では以上の2点が主な制約要因となる。既納先ユーザーや見込み客への訪問がしづらくなるし、ユーザーがローンで購入する場合は、収入の確認など業務量が増大することになる。

1960年代半ばにマイカーブームが始まってからほぼ20年の間、カーセルスは訪問販売が主体だった。クルマの性能や価格とともに、足繁く通う営業担当者の熱意も購入決定の大きな要素となった。クルマを介して営業担当者と顧客が適度な人間関係を築き、そこから年100台以上を売るスーパー営業者が誕生する良き時代でもあった。

だが、クルマの普及が進み、バブル崩壊後には訪問販売の非効率さも目立つようになって、店頭での販売が主流となった。1年に靴を何足も消耗する営業の時代は、遠い過去の話になった。一方で待ちの営業は楽かもしれないが、自分で顧客を開拓するという営業担当者の喜びも薄れているように思える。

◆逆手に取って年に1度はユーザーのもとへ

個別訪問による新規顧客の開拓は非効率としても、既納先ユーザーへの訪問は依然として重要だ。車検が近づけば買い替えや入庫を依頼、新モデルやモデルチェンジがあれば紹介する。そうした基本的な動き方をおろそかにすると、ユーザーは流出してしまう。

改正特商法の施行は、営業担当者が外に出ることに縛りをかける恐れはあるが、逆手に取って基本活動を考え直すチャンスだ。顧客を訪問して断られても、1年を置けば再度の勧誘はできるからだ。

今は1年に1度でもユーザーのもとを訪ねる営業担当は少数派なはずだ。2年に1度の車検入庫の勧誘もハガキで済ませるのでなく、きっちりフェイス・トゥ・フェイスでやれば成果も出やすい。法改正による規制強化は、営業活動の足元を見つめ直す絶好の機会でもある。

《池原照雄》

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