【プリウス プラグインHV 発表】仏が支援、トヨタの全方位戦略

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14日に行われたプリウスPHVのキー引き渡し式
14日に行われたプリウスPHVのキー引き渡し式 全 6 枚 拡大写真

トヨタ自動車が次世代エコカーの本命技術としている充電可能なハイブリッド『プリウス プラグインハイブリッド』。本格販売は渡辺捷昭前社長が表明していた2010年から2011年末へと1年ずれ込む見通しだが、最終的に600台が試験的に生産されるリースモデルの引渡しはすでに開始されている。

最大の引き受け手は、環境都市宣言で知られるフランス北部のストラスブール市で、一気に100台を導入する。今年12月には世界最古といわれる同市のマルシェ・ド・ノエル(クリスマス市場)が開催されたが、トヨタはそのスポンサーもなっていた。14日に会場である東京国際フォーラム中庭で引渡し式が行われた。

その席でフランス電力公社EDFの社長に就任して間もないアンリ・プロリオ氏は、「世界で初めて(充電可能な)プラグインハイブリッド、充電インフラ、リチウムイオン電池の3つ、トヨタ、ストラスブール市と共に実証試験できることを嬉しく思う」と語った。

原発大国であるフランスは、電力がきわめて豊富であり、他国に送電網を通じて電力を輸出するほど。それだけに、EVに対する関心も強い。フランス経済事情通によれば、プロリオEDF社長はモルガン・スタンレー・フランス会長、水質浄化から交通までを手がける環境会社ヴェオリア・アンヴィロンヌマンのPDG(最高経営責任者)を務める実力者。エネルギー戦略について非常に野心的で、アラブ諸国など新興国向けの原発受注で日本勢を次々に出し抜いてきた“やり手”で、次期大統領候補の声もあるという。

EDFは純電気自動車や燃料電池車など、新エネルギー車全般に高い関心を示しているが、その中でプラグインハイブリッドは、航続距離や充電時間など性能面の制約が少なく、いつでもどこでも乗れるという最もクルマらしい使い方が可能であることから、普及の後押しに特に力を入れる構え。その急先鋒であるプロリオ氏の支持を取り付けたことは、トヨタのプラグインハイブリッド戦略の未来を明るくする好材料だ。

技術立国を掲げる日本だが、脱石油を成し遂げるための社会の枠組み作りでは、とても世界の最先端とは言えない。欧州の大陸側諸国のエネルギー政策に大きな影響力を持ち、原子力、バイオエネルギー、リチウムイオン電池、特殊材料、送電などエネルギー分野の技術資産を豊富に有するフランスは、近い将来、脱石油フレームワークの構築をめぐってアメリカと勢力を二分する地位に立つ可能性が高い国だ。

アメリカがプラグインハイブリッドやEVの導入について、オールアメリカを重視するモンロー主義的傾向を見せている中、フランス政府にも深々と食い込むトヨタの全方位外交戦略がどう実を結ぶか、非常に興味深いところだ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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