【池原照雄の単眼複眼】欧州市場でも日本勢を圧倒した韓国ヒュンダイ

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インセンティブ効果で09年の欧州は横ばい

欧州自動車工業会(ACEA)のまとめによる2009年の欧州新車販売(乗用車)は、08年比でほぼ横ばいとなった。日米の需要が大幅に減少するなか、ドイツなどのスクラップインセンティブ効果で落ち込みを食い止めた格好だ。

ただ、日本勢は日産自動車を除いて総じて不振であり、上位6社の合計シェアは前年から0.4ポイント下落した。一方で北米や中国同様に、欧州でも韓国・現代自動車の販売増が光る。自国通貨安という追い風はあったものの、09年はグローバルに同社の躍進が際立つ年となった。

09年の欧州乗用車市場は西欧18か国で前年比0.5%増の1363万台。この18か国にEU(欧州連合)加盟の中東欧10か国(ロシア、ウクライナ除く)を加えた28か国の統計では1.6%減の1448万台となった。

◆7位に浮上もシェア落としたトヨタ

最大市場であるドイツが前年比23%増、2番目に大きいフランスが11%増と、いずれもスクラップインセンティブにより2ケタの伸びとなって全体の落ち込みを軽微にとどめた。中東欧10か国では27%の大幅減となっており、政府の市場テコ入れ策の有無が東西格差につながった。

企業別ではVW(フォルクスワーゲン)、PSA(プジョーシトロエングループ)、ルノー、フィアットといった欧州の量販メーカーが横ばいないし小幅のプラスを確保する一方、高級車メーカーのBMWとダイムラーはいずれも前年を13%下回った。

日本勢ではトヨタ自動車が4.7%減の約73万台となり、メーカー別ランクを前年の9位から7位に上げた。しかし、販売シェアは0.2ポイント減の5.0%に落としている。これに対し、ルノー製ディーゼルエンジン搭載のSUVが堅調な日産は、日本勢では最大となる9%の伸びを確保。インドから供給を始めた小型車が人気のスズキは0.6%増の横ばいとなって、日本メーカーでは3番手につけた。

◆範とすべき「現代ウェイ」の活力

しかし、マツダや三菱自動車が2ケタの落ち込みとなったこともあって、富士重工業とダイハツ工業を除く日本メーカー6社の合計シェアは13.1%と前年より0.4ポイント落ち込んだ。日本車の低迷を突くように販売を伸ばしたのが韓国の現代(ヒュンダイ)自動車だ。

傘下の起亜自動車を含む販売は16.8%増の約59万台と、全メーカーで最高の伸びとなった。通貨ウォン安の追い風を生かし、ドイツを中心に価格競争では猛威を振るった。日本企業は「安売り合戦への参入を自重した」(中堅メーカー首脳)ところが少なくなく、シェアを落とすこととなった。

円とウォンで逆方向に動いた通貨のハンディはいたしかたない。だが現代は、市場に応じたキメ細かい商品投入や米国で導入した失業時の返品プログラムなどユニークな販売手法により世界であまねくシェアを伸ばした。活力に満ちた「現代ウェイ」は、リーマンショック後、今ひとつ元気のない日本メーカーにとって範とするところ多といえる。

2009年欧州(28か国)の日韓メーカー販売実績(ACEA統計)
メーカー 販売台数 前年比増減率
トヨタ 73万0831台 ▲4.7%
日産 36万6711台 9.0%
スズキ 25万0309台 0.6%
ホンダ 24万4693台 ▲7.7%
マツダ 21万1100台 ▲13.5%
三菱 9万8193台 ▲17.8%
現代 59万4240台 16.8%
(▲はマイナス、ヒュンダイはキア含む)

《池原照雄》

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