マルキオンネにダーツの矢、ローマ教皇も…フィアット工場問題

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テルミニ・イメレーゼ工場
テルミニ・イメレーゼ工場 全 2 枚 拡大写真

フィアットのシチリア工場閉鎖問題に関して、イタリア国内ではさまざまな混乱が生じている。

問題の発端は、フィアットのセルジオ・マルキオンネCEOが1月12日、デトロイトモーターショー会場で、ランチア・イプシロンを生産しているシチリアのテルミニ・イメレーゼ工場を2012年に閉鎖すると言及したことだった。

フィアットによると、テルミニ・イメレーゼ工場の従業員数は1400名。昨2009年から浮上していた同工場の閉鎖案が、より具体的に示されたかたちだった。

マルキオンネCEOの発表以後、同工場では抗議行動が頻発するようになった。1月末には一部の従業員が工場の屋根に登って9日間にわたり夜を明かしたほか、部品搬入用ゲートを封鎖して生産をストップさせる事件も起きた。

2月3日には、テルミニ・イメレーゼ工場の従業員を支援するため、国内各地のフィアット工場でストライキが決行された。先に閉鎖が決定したミラノ郊外アレーゼ工場の従業員も同調。ロンバルディア州庁舎(旧ピレッリ本社ビル)前で運動を繰り広げ、セルジオ・マルキオンネCEOの写真にダーツの矢を投げた。

遠隔地であるテルミニ・イメレーゼ工場の製品は、部品や完成車の輸送費が嵩むことなどから、本土のフィアット工場で造る同じ製品より、1台あたり約1000ユーロ(約12万円)割高といわれる。

参考までにイタリアでは昨年末から今年にかけて中国の奇瑞汽車やインドのタタがテルミニ・イメレーゼの買収に興味を示したと報じられたが、奇瑞、タタとも「その意思はない」と否定した。

そうしているうちに政界とフィアットの軋轢も生じてきた。一刻も早い解決を迫るイタリア政府に対し、フィアットのモンテゼーモロ会長は2月5日、「国家は、フィアットをかつて一度も財政的に支援してくれたことはない」と発言。それに対してスカヨーラ経済推進大臣は、「フィアットは、政府とイタリア国民のおかげで成長した」と即座に反論した。

こうした冷え切った関係のもと、国内ユーザーが期待していた乗用車買い替え奨励金制度の再開も微妙になってきた。

ちなみにローマ教皇ベネディクト16世も1月31日のミサで、労働争議が発生している国内他業種の工場とともにテルミニ・イメレーゼ工場の名前を挙げて、「雇用を維持すべき」と訴えた。フィアット工場問題は、法皇までが憂う問題にまで発展している。

《大矢アキオ Akio Lorenzo OYA》

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