南米チリで発生した大地震で、日本の各地の湾岸も潮位が上がるなど影響が及んだ。津波警報発令中の東京マラソン続行判断は適切だったのか。
東京マラソンのフィニッシュゲートが設置された江東区有明の東京ビッグサイトは、臨海地区の埋立地に建つ。フィニッシュに走り込むランナーの数十メートル先は東京湾だった。津波警報は東京湾内湾にも出ていた。
そのせいか2日になって、中井洽防災担当相の「警報を出しても意味がないということになると、次回の警報が信用されなくなる」という発言につながった。ただ、主催の東京マラソン事務局からすると、何もせずに慢心していたというわけではなさそうだ。
同事務局海老原勉広報渉外副部長は言う。「記録を国際公認記録とするためには、標高を把握してコースを設定する必要がある。だからフィニッシュ地点は海抜約6mとわかっていたし、南鳥島の津波情報も入手した。1mという予報を上回る高さであっても対応できると考えた」
小笠原諸島は東京都内だ。本州から1800km離れた場所に南鳥島があり、事務局はそこから津波観測情報を得て、イベント継続の安全性を確認していたという。現場には避難勧告も出ていなかった。
結果的に、東京で影響を受けたのは、観客の無料搬送で張り切っていた屋形船東京都協同組合だけだった。浅草橋からフィニッシュ地点の東京ビッグサイト桟橋(有明小型船乗り場)へ向かうはずだったが、組合は28日午前10時30分に運航中止を決断。運航開始前に全便の欠航を決めた。担当者は「残念ですが、また来年お願いします」と、来年に期待をつないだのだった。