エコとスポーティの両立を目指したホンダの新型ハイブリッドクーペ『CR-Z』。能力はミニマムだがシステム重量が軽いというホンダのハイブリッドシステム「IMA」の特性を生かし、車両重量は1130kg(6速MT)と、普通車のハイブリッドカーとしては最軽量級に仕上がっている。そのCR-Zを横浜近郊で試乗する機会を得た。
スタート地点は横浜の臨海エリアを巡るコースで首都高速、横浜横須賀道路などの高速道路34km、一般道7.3kmの計41.3km。平均車速や加減速の度合いなどを厳密に決めたわけではないが、高速道路は走行車線の流れより優速、追い越し車線を飛ばしている車より劣速、エアコンは常時ON、基本的にエコランはあまり意識せずという条件で走ってみた。
最初に乗ったのは上位グレード「α(アルファ)」のCVT車。試乗車はレザーインテリアやスカイルーフなどのオプションが満載され、まさに豪華装備の個体だった。
高速道路に乗って、まず3モードドライブシステムを試してみた。エコドライブのECONモード、バランス型のNORMALモード、スポーティドライビングのためのSPORTモードがあるが、同じハイブリッドシステム「IMA」を使う『インサイト』に比べ、ECONでも出力を大幅にセーブしているという印象は薄い。NORMALはモーターアシストをより積極的に使うが、ECONでもスロットルを踏み込めば元気よく走る。
POWERはワインディングロードやサーキットなどに最適化させたモード。一般的な日本車のATのSレンジは、変速する回転数を高めたりロックアップをあまり使わなかったりするものの、普通に走るときにはDレンジと大差なく走ることができる。それに対してCR-ZのSPORTモードはドイツ車やフランス車のATのように、発進加速時以外は極力2500rpm以上をキープするというセッティング。EUをメインマーケットとするモデルらしい部分だ。
高速道路区間は平均車速81km/hで走り、オンボードコンピュータ上の平均燃費は19.0km/リットルだった。一般道の車速は平均23.0km/hで、ゴール時の通算平均燃費は18.9km/リットル。数か所のETC通過後に全開加速を試みたり、市街地でも流れをリードしながら走ったことを考慮すると、燃費は悪くない。燃費計の数値を1割過大とみた場合、実燃費は16km/リットル台と推測される。
CR-Zのパワーパッケージは最高出力114psの1.5リットル直4・SOHCと同14psの交流同期モーターを組み合わせたパラレルハイブリッド。システム全体では最高出力124ps、最大トルク17.7kgmと、1.8リットル級のスペックを発揮している。
実際に走ってみると、とくに40 - 80km/hといった中間加速において、モーターアシストによるトルクの上乗せ効果が顕著。絶対的な速さはともかく、加速感の気持ちよさやレスポンスの俊敏さによって、体感的にはかなりスポーティだ。そのへんはアウディ『A3』やフォルクスワーゲン『ゴルフ』の1.4リットルターボ+7速DSGと通じるものがあるように思われた。