【e燃費アワード09-10】スバル R2 受賞インタビュー…エンジン設計部 白坂暢也主査

エコカー 燃費
スバル エンジン設計部 白坂暢也 主査
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50万人の「e-nenpi.com」登録ユーザーによる実用燃費測定の年間集計が「e燃費アワード2009-2010」として表彰されている。今年の軽自動車部門はスバル『R2』が受賞した。R2は4年連続の受賞となる。

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毎年複数の新型車が燃費性能の向上をうたって登場してきている現状で、4年間も実用燃費でナンバーワンを達成できたことは快挙と言っても過言ではない。その秘訣はなんだろうか。富士重工業スバル技術本部エンジン設計部の白坂暢也主査に聞いた。

◆スバルならではのユニークかつ真面目なアプローチが実った

----:e燃費アワード軽自動車部門の4年連続受賞おめでとうございます。毎年のように燃費性能を謳う新型車種がでてくる競争の中、ずばり、4年間王座を守ることのできた理由はなんでしょうか。

白坂:ひとことでいうなら、このR2は「真面目につくったクルマ」ということに尽きるのではないでしょうか(笑)。R2の開発は、2001年ごろから検討が始まったのですが、次世代の軽自動車のプラットフォームを作ろうという思いがありました。

R2の設計には2つのベンチマークがありました。ひとつは、『ヴィヴィオ』の10・15モード燃費24km/リットルという数値。燃費については、まずこれが目標となりました。もうひとつは動力性能です。1998年に『プレオ』にマイルドチャージというスーパーチャージャーを搭載したモデルがありました。これは、パワーを追求する過給器ではなく、使い勝手や運転のしやすさを向上させるために過給機を搭載したものです。R2の動力性能をプレオの過給器搭載モデル並みにするというのが2つ目です。

また、10・15モードやJC08モードなどとも違った基準で社内で独自の実用燃費の評価モードを持っています。それは街乗り用と高速走 行用の2種類あります。軽自動車ではユーザーの利用環境に合わせた街乗りモードの目標を高く設定して仕様を詰めました。

----:ピークパワーのための過給器ではなく、燃費やドライバビリティのために過給機を利用するコンセプトは、当時としては斬新な考え方でしたね。

白坂:そうかもしれません。この2つの目標を達成すべく、エンジン、車体、ミッションの各部門がなにをできるだろう、とそれぞれが作り込んでいったことが、現在の競争力につながっているのだと思います。

軽量化がうまくいったことが燃費については大きいでしょうね。エンジンだけでもプレオの過給器搭載エンジンより19kg、全体では70kgほど軽量化を実現しています。

プレオのマイルドチャージに対してR2の4気筒の自然吸気エンジンは、トルクは低いですが、軽量化によって50%スロットル加速、25%スロットル加速の0-40km/hはタイム的に上回ります。ドライバーが求める加速を、より少ないアクセル開度で得られることが実用燃費につながったのだと思います。

----:燃費を追求する軽自動車では3気筒が主流ですが、このR2は4気筒です。

白坂:エンジンの気筒数は多ければ燃費がよいというわけではありませんが、4気筒エンジンはバランスが良く、3気筒エンジンに比べてアイドリング回転数が低かったり、低中速域での安定性が高かったりします。ただし、高速域では気筒数が多いほうがフリクションロスが大きくなり、燃費には悪影響を与えます。結果論かもしれませんが、4気筒エンジンが軽自動車の実用域での燃費向上に有利に働いていると考えられます。

また、スバルの軽自動車のエンジンは、シリンダの内径、ボアに対してピストンの移動距離、ストロークが長い「ロングストローク」エンジンとなっています。4気筒エンジンは当然3気筒エンジンよりボアが小さいので、シリンダ内の燃焼速度が速くなります。これも燃費向上にプラスの面があります。

----:2001年ころの設計コンセプトと目標に対する地道な作り込みが、結果的に、現在の燃費指向を先取りした形になっている。4年連続の受賞には、そのような必然性がちゃんとあったということですね。

白坂:あとはCVTの制御技術でしょうか。ご存じのようにスバルは軽自動車CVTの先駆者として、その制御には長年の技術とノウハウを持っている自負があります。走行状況やドライバーの操作などによって細かく制御を行っています。

◆第3世代ボクサーエンジン、リニアトロニックCVT、終わりなきスバルの追求

----:後半は、R2の話ではありませんが、スバルの『レガシィ』や『インプレッサ』、『フォレスター』など乗用車での燃費性能についての戦略などお聞かせいただけますか。

白坂:先程のコメントと反対にボアの大きい水平対向(ボクサー)エンジン単体としての燃費向上の戦略はかなり変わってきます。アプローチとしては、VVTを搭載する、EGRを採用するといった「デバイス」を追加していくことで燃費を改善する方向がメインとなっています。組み合わされるトランスミッションは燃費を考える上で欠かせないデバイスとなるでしょう。レガシィから搭載されたリニアトロニックCVTは、燃費に対する切り札とも言えます。すでにエクシーガにも展開され、今後はフォレスター、インプレッサにも搭載されていきます。

今後、スバルの軽自動車はOEM車にシフトしていきますが、R2やその他の軽自動車で培った低燃費エンジンやCVT技術は、人材も含めてレガシィやインプレッサなど他の車種のために活用、発展することになります。

----:軽自動車で実績がある低燃費技術が普通乗用車にどのように展開されるか楽しみですね。

白坂:自動車の燃費向上については、現在、総合力が問われる状態にあるといえます。以前ほどに飛び道具的な技術が少なくなってきています。最近では、電力消費量を抑えるとか、イナーシャウェイトランク(公的な燃費測定モードに適用される車重の分類)を最適化するとか、果ては渋滞を回避するといったインフラを含めた議論までされるようになってきています。開発側も総合的な技術の集約が要求されています。

----:なるほど。モード燃費と違い実用燃費を引き出すには、クルマ単体だけではなく、道やドライバーのポテンシャルを引き出すことも重要ですね。

白坂:SI-driveはもともと、燃費向上というより運転する楽しさを広げてもらおうという意味がありましたが、新型レガシィからはエンジン始動時は常にIntelligentモードとし、低燃費走行に適したスロットル制御、ロックアップ領域の拡大、シフトアップインジケータなど、AT、CVT、MTそれぞれの車種に合った燃費制御を行っています。燃費計などドライバーに対する情報も燃費向上に役立つはずです。環境性能を考えながらも、運転を楽しみたいときはSportモードのような設定も真剣にチューニングしています。

リニアトロニックCVTや新しいSI-driveと水平対向エンジンの組み合わせをいろいろな車種に展開していくわけですが、当然現行のエンジンでの限界というのも考えなければなりません。われわれも新しいエンジンでやってみたいこともあります。先日のジュネーブモーターショーで発表したばかりですが、第3世代の水平対向エンジンの開発も年内投入を目指して始まっています。

----:ハイブリッドも視野に入れた第3世代ボクサーエンジンとリニアトロニックCVTの組み合わせなど、スバル独自のパワートレインで、走りと燃費が追求されていくということを聞いて、安心したスバルファンも多いのではないでしょうか。本日はどうもありがとうございました。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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