【D視点】紳士服のデザイン…BMW 5シリーズ

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5シリーズ
5シリーズ 全 16 枚 拡大写真
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お色直しの魅力
2009年11月ドイツで発表されたBMW『5シリーズ』新型が、日本にも上陸した。ボディサイズは、先代より僅かに拡大されて全長4910mm×全幅1860mm×全高1475mm。ホイールベースの60mm延長が、注目点。3.0リットル直6気筒を基本に、4.3リットルV8気筒のエンジンも用意されており、車両価額は715万 - 1040万円。

「省エネルギー、高性能」をコンセプトとし、ダイレクトインジェクションシステムやアルミ軽合金採用による軽量、高効率な新エンジンを筆頭に、ブレーキエネルギー回生システム、優れたエアロダイナミクス等、革新的ではないが信頼度の高い技術や、細部の改良がアピールポイントとなっている。

【画像全16枚】

『7シリーズ』のデザインアイコンを踏襲した5シリーズは、デザインの新鮮味は無いが、先代5シリーズから見れば、「お色直し」の良さは充分にある。定番のキドニーグリルは突っ込むように低く位置し、サイドのキャラクターラインも深く抉り込まれ、『7シリーズ』と比べて、スポーティなスピード感が表現されている。

ランプ類も、7シリーズのデザインアイコンを踏襲しながらも、デザインディテールの変化により、BMWを良く知るユーザーには分かるような格付けが為されている。コントロールされたデザインで本物感を追及したのが、5シリーズの特徴と言える。正しさを求める世相に往呼したように見えるのも、グットタイミングのようだ。

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デザイン重視の意味するところ
5シリーズ新型発表会ではBMWのデザイン重視が述べられ、はるばる訪日した5シリーズ担当デザイナーの熱き語りが、その主張に真実味を加えた。昔は、日本のメーカーでも、このような場面が多く見られたが最近は少なくなったので、報道対応の差がとりわけ目立った。

BMWに限らず、欧州のカーメーカーの新型車発表ではデザインの大切さを語る場面が多くなっている。しかも担当デザイナーが参加する場面では、デザンディテールまで具体的に説明するだけではなく、スケッチのデモンストレーションまで行われることもある。

しかしデザインを重視する発表会でも、先進技術のアピールに手抜かりがあるわけではない。優れた技術の保障があるからこそ、デザインの優秀性のアピールに真実味が出てくるからだ。

生物の身体の中身と外見は一体であり、相互の分離は不可能であることは誰でも知ることだ。クルマのデザインでも技術とは分離不可能と考えた方が良い。特にラグジュアリーカーにおいては、優れたデザインをアピールすることにより優れた技術を保障するような発表会形式が、主流となっている。

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紳士服の魅力
デザインの先輩であるアパレルのデザインと比べて、5シリーズのデザインを考えてみる。紳士服のデザインはシルエットとディテールで構成されている。シルエットがデザインの基本だが、腰を絞る、肩幅を強調、或いは寸胴と種類はあるものの、シルエットは変化のサイクルが長いので、自由に変えることが出来ない。

いきおい襟やポケットの形、または素材の使い分けなど、ディテールのデザインで流行や個性を表現することになる。小さな部位の苦労は地味で楽しくないので、多くのフアッションデザイナーは紳士服を嫌厭するようだ。しかし考えようによっては、微小だからこそ「味」が出せる喜びもある。

新世代のBMWデザインも、デザインの大きなところを守りディテールでの工夫をしているので、「味」も出せているようだ。信頼性や社会性が求められる紳士服デザインのセオリーに則ったことにより、本物感の表出が可能となったと見ることも出来る。

紳士服のデザインを支える布地の技術も、革新と言うよりは、日頃の細かい改良の積み上げにより成り立っていることが多い。BMWがデザインを支える技術の改善に熱心なもの、紳士服の魅力創出と似ている。地道な技術に相応しく、クルマのデザインが地道に完成するのも自然の成り行きでもある。
D視点:
デザインの視点
筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。【D視点】連載を1冊にまとめた『2007【D視点】2003 カーデザインの視点』を上梓した。

《松井孝晏》

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