VW、イタルデザインを買収か---どうなる?

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アルファスッド(1971年)
アルファスッド(1971年) 全 5 枚 拡大写真

独フォルクスワーゲン(VW)がイタルデザイン-ジウジアーロを近日中に買収するという情報が、イタリアの自動車業界を駆け巡っている。これは、業界紙『オートモティブニュース』が19日、複数の情報筋の話として伝えたことがきっかけだ。

イタルデザイン-ジウジアーロは1968年、当初「イタルスタイリング」の名称で、ジョルジェット・ジウジアーロ、エンジニアリング担当のアルド・マントバーニらによってトリノに設立された。デザインだけでなく、量産システム構築まで一貫してクライアントに提案・コンサルティングする彼らの方式は、カロッツェリア界に新たな潮流を起こした。

彼らは、アルファロメオ初の大衆車である1972年『アルファスッド』や、VW『ビートル』の後継車として初の成功を収めた1974年『ゴルフ』など、創業当初からヒット作を次々と送り出した。

近年はクライアントである自動車メーカーが社内デザインに比重を移していったのに合わせてデザイン業務が減ったため、逆にエンジニアリング部門を強化。2代目BMWグループ『MINI』の開発計画などに参画した。いっぽうで数年前、創業時からのパートナーであったマントバーニが株式を手放したため、事実上会社はジウジアーロ家のものとなっていた。

このVWによるイタルデザイン買収説は、21日トリノで行なわれた同業者であるピニンファリーナの創業80周年式典でも、出席者の一部で話題となった。しかし、ジョルジェット・ジウジアーロ会長および、息子のファブリツィオ・ジウジアーロ副会長などは、会場に姿を現さなかった。

現在、イタルデザイン-ジウジアーロ・グループは、非自動車部門のプロダクトデザインを手がける「ジウジアーロ・デザイン」などを含め、約1000名のスタッフ/コラボレーターで構成されている。

前述のように、ジウジアーロ本人にとって、VWゴルフは彼の出世作である。もし今回の情報が現実になると、ジウジアーロはそのきっかけをつくってくれた会社に助けられることになる。

もうひとつ気になるのは、今後のイタルデザイン-ジウジアーロの行方だ。仮にVWのシンクタンクとなれば、他のクライアントからの依頼は当然減ってゆくだろう。その際思い起こされるのは、往年存在したトリノのカロッツェリア『ギア』だ。

ギアは1960年代末にデトマソなどの傘下に入ったのに続き、1973年にフォードによって完全に買収されてしまった。当初は同社のデザイン拠点として稼働していたが、やがてフォード各モデルにおける最高級仕様の名称と化してしまった。

仮に今回のニュースが真実になった場合、イタルデザイン-ジウジアーロの役割とブランドが、VWグループによって将来どのように扱われるかも注目に値する。

ちなみにジョルジェット・ジウジアーロはもともとギアのチーフデザイナーだった人物で、独立のきっかけは当時のデ・トマゾ支配下での混乱に嫌気がさしたことだった。彼の会社が奇しくも同じ運命を辿るかもしれないのは、長年イタルデザイン-ジウジアーロの動きを追ってきたウォッチャーである筆者としては複雑な思いである。

《大矢アキオ Akio Lorenzo OYA》

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