【SLS AMG 日本発表】注目はドライサンプ、パワーユニットに見る魅力

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メルセデスベンツ『SLS AMG』に搭載される「M159」エンジンは、『E63AMG』などにも搭載されているAMG専用設計の「M156」をベースに開発されたSLS AMG専用のパワーユニットだ。

M156自体、6.2リットルV8というビッグシリンダーとしては、驚異的な高回転型ユニット。SLS AMGに搭載されるに当たって、さらに隅々に渡って専用チューニングを受けてパワーアップが図られているが、スペックを見比べてみると意外なことが分かる。

E63AMGと比べ、最高出力は1割近く増やしつつも発生回転数は同じ6800rpm。しかも最大トルクに至ってはE63AMG(5200rpm)より低い4750rpmでやや太い650Nmを発生させる。

つまり、SLS AMGのパワーユニットは、単純により高回転型にしているワケではない、ということだ。SLS AMGではリヤシートがないことや、排気系の取り回しの自由度が高いために、E63AMGや『C63AMG』よりもエンジンパワーを引き出しやすいということも背景にはある。しかし、それだけではない。

7200rpmでリミッターが作動する通常の63系モデルに比べSLS AMGは、タコメーターの表示を見る限り、やや回転数が引き上げられているようだが、これは新しいトランスミッション、「AMGスピードシフトDCT」を採用したことも影響しているようだ。ともあれ同じ回転数でもより高出力を絞り出すだけに、エンジンの負担は大きくなっている。

そこでクランクケースも剛性を高めた専用の形状とされ、より軽量でタフな鍛造ピストン、潤滑性、耐久性の高いクランクメタルなど高出力に対する強化策が施されている。延べ120か所の形状変更は、ほとんど専用エンジンと言ってもいいほど、入念なチューニングと言える。

中でも、このモディファイで最もキーになるのはドライサンプ化だろう。オイルパンのスペース分だけエンジンを低い位置にマウントできるだけでなく、前後左右にGがかかった状態でも安定した潤滑ができるというのが、一般的に言われるドライサンプのメリットだ。しかしSLS AMGは高出力化のためにもドライサンプはマストだったと思われる。

油圧経路のレイアウトにおける自由度が上がるので強力なオイルポンプによって圧送できるため、常に安定した油圧が得られるのだ。これによって、高負荷時にも爆発の圧力を受け止め続けるクランクシャフトの油膜切れを防止することが、より高いレベルで可能になる。これによってエンジンチューニングへの余裕度は一気に広がるのである。

DTMなどのレースマシンを手がけるAMGにとって、エンジンの高出力化はさほど難しいテーマではない。市販車として、メルセデスAMGとしての信頼性や耐久性を確保する方が重要であり、困難な課題だったハズだ。

ほかにもドライサンプ化は、ボンネットとのクリアランスを確保しつつも吸気系部品の理想的な形状を可能とし、結果的に理想的な出力特性を得るために貢献している。

6.2リットルから571psを絞り出し、街乗りからサーキット走行までこなす、柔軟で強靭な心臓。このパワーユニットだけをみても、AMGの力の入れようが分かるというものだ。

《高根英幸》

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