フィアット、ウルトラC的経営戦略

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ムルティプラ現行
ムルティプラ現行 全 6 枚 拡大写真

フィアットがここのところ相次いで打ち出した方針が、業界を戸惑わせている。まずは、新型『ムルティプラ』の生産工場に関する22日の発表だ。

フィアットは、現在トリノのミラフィオーリ本社工場で行なっているムルティプラの生産を、新型切り替えに合わせてセルビア工場に移転する方針を明らかにした。

各労働団体は10日、現在ポーランド工場で行なわれている2代目『パンダ』の生産を、2011年発表の3代目からイタリアに戻すことに成功したばかり。したがって、彼らにとって今回のムルティプラの国外移転発表は、経営側から“騙し打ち”をされた感が強い。ミラフィオーリ工場では、雇用継続に不安を抱く労働者による時限ストが発生した。

続く28日、フィアットのマルキオンネCEOは、業界団体である「イタリア工業連盟」(コンフィンドゥストリア)からの脱退と、労働団体のひとつである「金属労連」(メタルメッカニチ)との契約更新打ち切りの可能性を示唆した。マルキオンネ体制下の生産拠点見直しにおいて、旧来のしがらみは“足かせ”になるとみられたのがその原因だ。

イタリア工業連盟はフィアット前会長のルカ・ディ・モンテゼーモロ氏が2008年まで会長を務めるなど、フィアットとの歴史的繋がりは深かっただけに、今回のマルキオンネ氏の発表は関係者を驚かせた。

ちなみに、その予告ともいえるものが、19日フィアットが設立した100%出資の子会社「イタリア・ポミリアーノ工業」だった。これは一時期閉鎖も検討した南部ポミリアーノ・ダルコ工場を、イタリア政府や労働団体の強い要請で存続させることになったフィアットが、新労働協約に合意した従業員のみを再雇用するための会社である。この新会社は、前述の各団体に加盟しないため、より自由な雇用形態が可能だ。

毎年この時期、イタリアの自動車業界は夏休みムードに支配される。しかし今年ばかりはフィアット−マルキオンネ体制による相次ぐウルトラC級戦略を前に、労働組合・経済団体とも息の抜けないものになりそうだ。

《大矢アキオ Akio Lorenzo OYA》

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