【ホンダ フリードスパイク 発売】担当者が語る、純正アクセサリー開発の現場

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左からエクステリアデザインを担当したホンダアクセス四輪デザイン部の戸田保弘氏、インテリアデザインを担当した小井沼勉氏、そして商品企画を担当した四輪商品企画室の佐藤秀夫氏
左からエクステリアデザインを担当したホンダアクセス四輪デザイン部の戸田保弘氏、インテリアデザインを担当した小井沼勉氏、そして商品企画を担当した四輪商品企画室の佐藤秀夫氏 全 18 枚 拡大写真

3列目シートを省略して特徴的な反転フロアボードを装備するなど荷室周りのユーティリティを高めたホンダのレジャービークル『フリードスパイク』。発売から1か月あまりで1万台を超える受注を得て好調なスタートを切った形だ。

そのフリードスパイク、他のホンダ車と同様に純正アクセサリーも豊富にラインナップする。特に車両本体のデザインについてはレポートされる機会も多いが、用品開発の現場はあまり知られてない。今回は、純正アクセサリーの開発を手がけるホンダアクセスから、商品企画を担当した四輪商品企画室の佐藤秀夫氏、エクステリアデザインを担当した同四輪デザイン部の戸田保弘氏、そしてインテリアデザインを担当した同部の小井沼勉氏の3名に話を聞いた。

◆機能性とタフさを強調したエクステリアアクセサリー

----:フリードスパイクのアクセサリーを開発するにあたって、どのようなコンセプトで取り組んだのでしょうか。

佐藤:用品開発の話に入る前に、まずフリードスパイクというクルマの成り立ちからご説明します。ベースモデルの『フリード』には発売当初から「FLEX(フレックス)」という5人乗り仕様がありますが、本来このFLEXが前モデルの『モビリオスパイク』の後継として位置づけていました。つまりFLEXでモビリオスパイクの代替需要を狙ったのです。ただ、やはりモビリオスパイクのレジャービークルとしての楽しさや使い勝手を満足していただける方々に向けては、よりその方向に特化したモデルが必要でした。そうして生まれたのがフリードスパイクなのです。

----:ノーマルのフリードのエクステリアアクセサリーがスポーティかつマイルドな路線だったのに対して、ガンメタに統一されたロアスカート類などスパイクはよりタフな路線ですね。

佐藤:そうですね。フリードスパイクは、ファミリーミニバンであるベース車のフリードに対して、「ユーティリティ性」や「タフさ」を先鋭化させたモデルです。アクセサリーの商品企画において、ユーザーターゲット層もフリードとは異なりますので、よりベース車の狙いを際立たせる機能性重視の方向にしました。フリードスパイクにはオプションでロアスカート類が用意されていますが、これはスタイリングを際だたせることに加えて、プロテクターというタフな実用イメージを持たせています。

----:戸田さんはエクステリア担当ですが、フリードスパイクでは、どのようなイメージでアクセサリーのデザインを進めたのでしょうか。

戸田:最初にキーワードを考え、“遊びのプロ・スタイル”をテーマとしました。アウトドアでの遊びのさまざまなシチュエーションからイメージを膨らませていきましたが、フリードスパイクは悪路を走破するようなSUVではありませんので、都会的でスマートなクロスオーバー車をイメージするデザインにしています。アクセサリーオプションのフロント、リア、サイドのロアスカート、ルーフスポイラーとリアガーニッシュをガンメタリック塗装として、スパイクの魅力をより強調する、プロユースのツールをイメージし表現しました。

----:たしかに、フリードは街中ではありふれた存在ですが、アクセサリーをフル装備したフリードスパイクを走らせていると、注目度も高かったように感じます。

戸田:私の中で心がけていたのは、フリードスパイクの“スパイク”らしさを、より引き出すこと。フォグランプガーニッシュなど機能関連部品にもスパイクらしさが出るようなデザインにしています。

◆安全性や信頼性に配慮した“純正”のクオリティ

----:佐藤さんは用品の開発にあたって“機能的”というコンセプトをおっしゃっていましたが、アクセサリーデザインにおいてそのコンセプトをどのように盛り込んだのでしょうか。

戸田:オプションのロアスカート類は、プロテクター風のデザインとしていますので空力特性の向上というよりも泥や跳ね石、縁石などからの保護や安全性などを考えて設計しています。たとえばフロントスカートですが、セパレートタイプになっているのは、Honda車の歩行者保護なども含めた要件を満たすとともに、無駄な重量の増加や価格を抑え、しかも破損した場合でも片側のみでも交換が可能になっています。また、サイドスカートにはLEDライトが内蔵され、夜間の乗り降りの足元確認に効果を発揮します。

----:そのあたりは、安全性や信頼性といった面では車両開発と同時にアクセサリーの開発も行える純正用品のメリットですね。

戸田:純正アクセサリーなので、車両と同等の開発要件や規格などすべてをクリアしており、仕様や諸元に悪影響を与えることはありません。

----:荷室のポケット類や反転フロアボードなどユーティリティ面の工夫はフリードスパイクの特徴ですが、インテリアアクセサリーの開発で心がけたポイントはありますか。

小井沼:インテリアアクセサリーも、基本的にはタフな機能性というコンセプトを共有しています。釣りやキャンプなどで荷室がそのまま活動拠点(ベース=秘密基地)になるようなイメージでシステムカーゴトレイを設定。ルーフインサイドレールでカーテンやハンガーを掛けられるように、また窓を開けていても日射を弱めるようなスクリーンシェードも用意しました。細かい部分では、ピラーやインパネのLEDイルミネーションが、窓に映り込まないような位置にレイアウトし光量を抑えるなど、運転の安全を妨げないような配慮をしています。

◆ホンダアクセスは“アンテナショップ”的な役割も

----:細かい実用性の追求や豊富なインテリアオプションは、ユーザーの声から生まれるのですか。

小井沼:アンケートや市場調査でのお客様の声も商品開発に活用しています。カー用品店など商品のリサーチを行うこともありますし、まったく違う業界の展示会などからイメージすることもあります。しかし、我々の会議や「ワイガヤ」でとことん話し合い、試作モデルを作って試し、使ってみて、自分たちでも納得したものが商品となります。ホンダアクセスは、ユーザーのニーズを先取りするいわば「アンテナショップ」的な役割も持っていると思っています。かつてホンダアクセスの商品から、お客様の賛同を得られ、ディーラーオプションから純正装備となり、Honda車の魅力アップに貢献したものもたくさんあります。

佐藤:現状の集計ですと、荷室にある反転フロアボードの下に収まるシステムカーゴトレイは順調に受注をいただいています。また、リアのルーフインサイドレールに至っては、大変人気の高いアイテムとなっています。ホンダアクセスは、実験的な商品開発も比較的自由にやらせてもらっていますが、車両開発と一体で商品企画をおこなっていますので、開発後の次期製品へのフィードバックなども行っています。

----:オプションから標準装備というものもあるわけですね。その、オプションの設計について、車両側との連携やコミュニケーションはどのような体制ですか。

戸田:純正アクセサリーは車両と同期して、強い連携をとりながら開発を行っています。しかし、設計する際に思い通りの場所にレイアウトできないときもあります。例えばフォグランプを理想の位置に置きたい場合に、すでに補器類があったりするようなケースがあります。このような時は、車両側の設計を変更してもらうなど、車両開発部隊と緊密に連携して動いています。

佐藤:ホンダアクセスは、ホンダの用品開発部門を独立させた会社です。組織としては別会社ですが、設計の段階から積極的にからんで最適なオプション製品をつくるような体制になっています。そのため、ディーラー純正オプションは、車両の標準装備品と品質はまったく同じです。オプションといえども後付け感は極力排し、高い質感の装備を実現しています。たとえば、革調のフルシートカバーですが、シート本体をしっかり覆い、機能的にも、カバーやエプロンのように簡単にずれてしまうような構造ではありません。

----:実は、私も最初は本革シートかと思いました。作りつけのようにフィットしていましたね。最後に、今回のフリードスパイクで特にここは力を入れてやったという所を教えてください。

戸田:やはり今回は、どんなボディカラーにも合うガンメタ色のエアロパーツ類ですね。SUVっぽくもなくミニバンでもない、スパイクらしいクロスオーバーなイメージを実現できたと思います。

小井沼:インテリアオプションの場合、実際に製品化にいたらないアイデアは実はかなりたくさんあります。その中でも商品化を実現できた千鳥格子柄のインテリアパネルはファッション性も考慮して素材や造り方にもこだわったアクセサリーです。これを装着すると、インテリアの雰囲気ががらりと変わります。価格も手ごろなので、ぜひお勧めします。

佐藤:実は企画当初、スポーティなエアロ路線のアクセサリー展開も考えたのですが、今回出来上がったものを見て、お客様からの好評振りをみると「タフさ」と「機能性」というスパイクの個性をより引き出す方向性は正解だったのかなと思います。街を行くフリードスパイクが増えるにつれて、純正アクセサリーの魅力も浸透していくといいですね。

《中尾真二》

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