【池原照雄の単眼複眼】トヨタ、インド市場開拓は人づくりから

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エティオス(デリーモーターショー10)
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育成校の1期生が現地工場へ

トヨタ自動車がインドで運営している技能者の育成校が7月に第1期生を送り出した。卒業生は入社試験を経て同社のインド工場に従事する。同国でのトヨタ車のシェアは3%台と苦戦しているものの、「モノづくりは人づくり」という同社創業以来の理念を実践し、長期的な視点で成長市場に向き合っていく。

この育成校は「トヨタ工業技術学校」で、トヨタの現地工場であるトヨタ・キルロスカ・モーター(カルナタカ州バンガロール市)内に立地し、同社が運営している。2007年8月に開校し、今回、3年間の履修を終えた1期生63人が卒業した。

インド工場での従事を念頭に技能教育のために設立したもので、一般的な工業課程とともに塗装、溶接、自動車組立て、メカトロニクスの専門4コースを設けている。生徒はトヨタのインド工場での技能実習にも取り組む。

同校は、経済的な理由などで高等学校への進学が難しい中学卒業者を対象に1学年60人余りの生徒を募り、入学金や授業料はインド工場が全額負担している。トヨタには愛知県豊田市に同様の育成校として「トヨタ工業学園」があり、インドでの運営には同学園も協力している。

◆設立翌年に開校の「豊田工科青年学校」がルーツ

トヨタ工業学園のルーツは、トヨタ設立の翌1938年(昭和13年)に開校された「豊田工科青年学校」だ。「日本人の頭と腕で自動車を造る」として自動車事業に進出した創業者・豊田喜一郎の肝いりで開校された。

当初は社内選抜だったが、戦後には募集を中学卒業者に切り替え、企業内訓練校としてトヨタの製造現場を支える技能者を輩出している。こうした技能者育成校の海外版はインドが初めてであり、同国市場を重視するトヨタの姿勢を映している。

スズキが乗用車市場で半数近くのシェアをおさえるインドでのトヨタの存在感は小さい。今年4〜7月の販売実績は前年同期比で50%増の約2万5000台と好調だが、シェアは3.3%にとどまる。トヨタとほぼ同じ90年代後半に進出後、いまでは2位グループに躍進した韓国・現代自動車は15%を確保しており、劣勢は否めない。

◆急がば回れのインド事業戦略

トヨタは今年末にはインド向けに開発した専用車『エティオス』を投入、反転攻勢をかける構えだ。同モデルは新設中のインド第2工場で生産する。新興諸国向けのエントリーカーとして4年をかけ、大幅な原価低減を図りながら開発したもので、1.5リットルのセダンと1.2リットルのハッチバックがある。

シリーズでは当面、年7万台の販売目標を掲げており、インドでの全トヨタ車の販売を倍増させたい考えだ。トヨタ工業技術学校を巣立った技能者は今後、トヨタ品質の確保に尽力し増産対応を担っていく。

人材育成の取り組みは、長い目で見ればインド経済への貢献活動であり、ブランドイメージの向上にもつながろう。歩みはのろくてもこの重点市場でしっかり足場を固めようという、急がば回れの戦略だ。

《池原照雄》

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