【池原照雄の単眼複眼】補助金終了、自動車メーカーは身銭を

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1年半で5837億円の財政出動

2009年4月に経済対策の一環として導入されたエコカー補助金が終了まで1か月余りとなった。補助金は08年秋のリーマンショック後、急速に冷え込んだ国内新車需要を持ち直させるカンフル剤として効果的だった。10月以降の反動は避けられないだろうが、ここからは自動車業界が自助努力でショックを和らげることだ。

エコカー補助金は当初、3700億円の予算枠で09年度1年間の措置として始まった。しかし、景気回復を確たるものとする狙いから今年度上期(4〜9月)まで延長され、予算枠は5837億円に膨らんだ。

9月末までに登録(軽自動車は届け出)されたエコカーが対象となるものの、予算枠を使い切った時点で受付終了となるため、これからの購入では対象となるかどうか微妙な段階に入っている。人気車種は、すでに補助金受領が不可能となっているものも少なくない。

◆大きかった需要押し上げ効果

政府はエコカー補助金を導入する際、延長分を含まない1年間の台数効果(市場創出効果)を69万台と予測していた。同じ時期に始めたエコカー減税との相乗効果を勘案すると100万台程度と見込んでいた。

補助金と減税が実施された09年度1年間の新車販売台数(軽自動車含む)は488万台となり、前年度を3.8%上回った。このうち、補助金と減税による効果を測るのは困難だが、08年末から09年春にかけての月次の落ち込みが20%前後にも達していたことを考えると、相当な需要刺激効果があったと見られる。

延長となった今年4月以降は前年同月比で2ケタ増が続いており、6月からはリーマンショック前の08年の同月を上回る需要が続いている。自動車メーカー各社の業績が急回復しているのは、大胆な固定費の削減や新興諸国需要の回復に因るところが大きいが、国内需要刺激策の寄与も小さくはない。

◆減産ショック緩和にインセンティブを

もっとも、雇用の創出につなげたいという政府の目論見は完全に外れている。自動車各社は昨年秋から期間従業員の雇用再開に踏み出しているものの、各社の非正規雇用者数はまだピーク時の2割前後に戻ったに過ぎない。10月以降の需要反動減を見通すと、現状維持が精一杯だろう。

現状を維持するにも、10月以降の減産ショックを可能な限り緩和させる必要がある。この1年半は国の財政出動に支えられたわけだから、これからは自動車各社の自助努力の出番だ。つまり、身銭を切って市場の急激な冷え込み抑止するという覚悟や器量が求められる。

トヨタ自動車は10月以降、販売店に臨時的なインセンティブ(報奨金)の支給を検討している。財政出動がもたらした利潤の一部を消費者に還元させ国内景気の浮揚の一助とするという観点からも、妥当な販売政策であり、各社の追随を期待したい。円高が重くのしかかるものの、為替レートに左右されない国内市場の掘り起こしは、むしろ円高対策ともなる。

《池原照雄》

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