【マップルナビ3 登場】「“コンテンツ勝負”の時代が来た」…キャンバスマップル 山本幸裕社長

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山本幸裕社長
山本幸裕社長 全 9 枚 拡大写真

カー用品店にも家電量販店にも行かない層がテレビ通販を利用する

----:PND向けのカーナビアプリ『マップルナビ(MAPPLEnavi)』のリリースから2年あまりが経ち、採用メーカーや機種も増え、テレビ通販を中心にユーザーへの浸透もだいぶ進んできました。この2年を振り返っていかがですか。

山本:当社は2008年に「マップルナビ」を発表してPNDのマーケットに参入し、2009年は「マップルナビ2」でガイドブック情報を取り込んだナビアプリに進化しました。そしてこの2010年に発表した「マップルナビ3」で、ローカルメディアに対する100冊のガイドブックデータを全てPNDのなかに入れ込むところまでは実現しました。地図とガイドブックの昭文社ならではのリソースを用いてローカルのストレージで出来ることは一通りやったのかな、という印象ですね。

----:マップルナビはハードメーカーと共に昭文社『まっぷるマガジン』のブランドバリューを訴求しつつ、テレビ通販を中心にユーザーを広げていきましたね。

山本:テレビ通販の場合、お客様は圧倒的に女性、それもご主人のために奥様が買われる場合が多い。カー用品店にも家電量販店にも行かない人が、通販で買うというケースです。ハードメーカー様には、マップルナビとのダブルブランドで訴求していただいています。ガイドブックのコンテンツに惹かれて、クルマは持っていなくても「持ち歩ける電子ガイドブックが欲しい」と、買われる方もいます。

----:通販での販売価格は3万円弱とPNDはリーズナブルな部類ですが、テレビ通販と考えると逆にかなり高額という印象もありますが。

山本:健康器具や布団などは2万円未満ですからね。商品単価が高いだけに、数が出ればかなりインパクトがでます。あるテレビ局では家電部門の通販で売上ナンバーワンの新記録となったと聞いています。

----:通販ルートに価値を見いだしたことで、マーケットを抑えることが出来た、と。

山本:新製品開発はテレビ局での販売・開発も含めて検討するまでになっていますから、いい循環はできつつあります。ただ、テレビ通販という新しい販路を開拓できましたが、この販路においては市場の拡大は飽和しつつあるのも確かです。われわれとしては、いショップ店頭での訴求を含めてマップルナビの魅力をどう幅広いお客様に伝えていくかも今後の課題と考えています。

◆“高級なワイン”をつくる心構えで

----:この冬にトライウインから登場するというPNDの価格もだいたいこれまでのメインストリームのPNDの価格をトレースするという印象でしょうか。

山本:そうですね。しばらくはマップルナビ2搭載PNDとマップルナビ搭載3PNDを併売していく予定ですので、いくらか価格に反映するということになると思います。ハードウエアの要件もQVGA&4GBのマップルナビ2とVGA&8GBのマップルナビ3とでは異なりますし。

----:昭文社は「まっぷるコード」やまっぷるマガジンの観光情報は、さまざまなカーナビに採用されるようになっています。これらのガイド情報の提供と、キャンバスマップルとしてのマップルナビの提案活動はどのように関わってくるのでしょうか。

山本:ガイドデータは多くのカーナビに採用していただいていますが、キャンバスマップルとしては、そのガイドデータをナビアプリの機能として組み込んで、洗練されたUI・機能をもたせることでマップルナビとしてのブランド価値を一層引き出したいと考えています。一房2000円する高級なブドウでも干しぶどうになってしまえば100円の価値しかありません。みずみずしさを保ったまま絞って、上等なワインを作れば3000円の価値が出るかも知れない。ガイドデータとナビアプリと組み合わせることで出る旨味というものがあるはずです。われわれは干しぶどうではなくワインを作っているんだと、ことあるごとにいろいろな人に語っているのですが(笑)。

◆ナビアプリ開発とコンテンツ制作は一体化していく

----:昭文社のもつガイドデータの可能性や価値をマップルナビで引き出せるようになる、と。

山本:マップルナビ3を出すにあたって、まっぷるマガジンからデジタルデータを出す直前に記述内容の正確性を洗い出す仕組みを作りました。全国8万件の情報のうち、1万件は毎年更新されますが、残り7万件についてもみずみずしい情報をお届けできるようになりました。デジタルデータの更新性というメリットを活かせば、ガイドブックにも新しい価値が生まれるということを、昭文社グループ内外に向けて訴えているところです。

----:となると、マップルナビの開発とガイドブックの制作は一体となって進むということになるのでしょうか。

山本:ええ。これまではガイドブックデータをそのまま譲り受けてデジタル化するという流れでしたが、今後はマップルナビのほうから本の企画にフィードバックするための取り組みを進めています。今後は、ナビの側からの提案も活かされるようになるでしょう。

◆旬の情報をタイムリーに届ける仕組み作りに着手

----:ローカルでできることをやり尽くしたとなると、通信連携も含めたコンテンツの更新も視野に入れているということですか。

山本:年間1万件入れ替わっているというと、やっぱり旬な最新情報が欲しくなります。家族でおでかけすると潮干狩りとか花火大会とかアウトドアとか今年の最新情報を提供したい。季節のコンテンツをお客様にタイムリーに届ける仕組みをナビゲーションに入れ込めないかなと、思案しています。本で言えば、新刊が出るイメージですね。昭文社の新着のガイド情報を通信で降ってくるようなイメージです。

----:より新鮮な情報が得られるとなると、コンテンツの価値も高まります。

山本:エアーで落とすデータと言っても、長時間の接続を必要とする膨大なデータ量でありません。たとえば、八ヶ岳に行くのであれば目的地周辺または自宅から八ヶ岳までのルート上周辺の情報だあればいいと思います。

----:旅先では自然と気持ちも高揚していますから、欲しい情報が手に入れられるとなると、その場でダウンロードするということもありそうですね。

山本:はい。2011年は旬のコンテンツをタイムリーに提供する仕組みを、さらにその先はガイドブック誌面の楽しさをどうナビUIに移すかを考えていきたいですね。DB化するはいいのですが、ナビやWebのように定型フォーマットに入れた途端に魅力が薄れてしまうものです。ワクワク感をUIとしていかに表現できるか。かなりフレキビリティをもった画面設計が必要だと思っています。それにはマップルナビの開発チームだけでなく、昭文社の編集担当も交えて、企画プロジェクトを立ち上げることも考えています。

◆ナビ機能の進化が行きつき“コンテンツ勝負”の時代が来た

----:そうなると、必ずしも携帯電話やPNDのような手のひらサイズのガジェットである必要は無くなってきますね。“ワクワク感”を演出する情報ツールとなるとiPadのようなタブレットのほうが相性が良さそうです。

山本:iPadだけでなく、今後はAndroidベースのタブレットは安価で販売されるでしょう。それらには当然3GやWiFiといった通信モジュールだけでなくGPSも入ってくるはずです。7〜10インチ程度サイズでXGAくらいの解像度ならば大きな文字で地図も広く見やすくできます。ナビ機能の進化が行き着いて横並びになれば、コンテンツが問われる時代になるはずです。

----:山本さんが数年前に絵を描いた通りですね。タブレットはプレゼンしやすい媒体で、店頭での訴求効果も大きいでしょう。昨今の電子書籍ブームもあり、昭文社グループにとっては追い風かもしれませんね。

山本:自車位置精度の向上や渋滞回避などナビ機能の高度化は、一段落ついた感があります。逆にオーバースペックの部分は削ろうという動きもある。今後、ナビに求められるのは、“いかに早く案内するか”というよりも“どこに案内するか”という提案力でしょう。われわれは、クルマから外して持ち運べるPNDというところで、旅をどう”演出”するかを意識しています。

----:毎年ごとの成長ニーズを機能に取り込んでいくということですね。マップルナビ3が出ましたが、この数字を重ねていくバージョンアップは今後も続くのでしょうか。

山本:続きますよ。当社では少なくとも「マップルナビ10」まではこの番号を重ねていくつもりです(笑)。

《聞き手 三浦和也》

《まとめ・構成 北島友和》

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