自動車安全特別会計の自動車検査登録勘定は、自動車ユーザーの自動車登録料や検査料でまかなわれている。しかし、ナンバー取得時に支払う登録料は適正なのか。
仕分け人が問題にしたのは、自動車登録情報を電子処理する「MOTAS」(モータス)というシステムだ。このシステムは1970年から稼働し始めた。現行のシステム開発・運営費は年間約60億8000万円。2012年から稼働する次期MOTASは3年間で45億1000万円が開発費として拠出され、稼働すると年間35億7000万円を必要とする。
国土交通省はこのシステムの意義を「不正登録を防止して所有権を保護することができる」「不正輸出の防止など犯罪を防止できる」という利点を挙げた。
だが、この自動車登録業務の処理システムでデータ化されているのは軽自動車や二輪車をのぞく車両だけだ。除外された部分は、全国軽自動車協会連合会が担当する。そこにはMOTASはない。
そこを仕分け人の梶川融氏(太陽ASG有限責任監査法人総括代表社員)が突いた。「軽自動車とシステムの違いによってトラブルはどのくらいあるのか」
国土交通省説明者は「リースで軽自動車を売って、軽自動車を持っているということで所有権を主張して即時取得で所有権を移すことができる。軽自動車では実際に持っている所有者が、(本来は所有者でないのに)所有権を主張することが起きうる」と、危惧したが、そのことを数字で説明することはできなかった。
また、別の仕分け人からはこんな疑問も提示された。
「100万円の普通自動車と軽自動車があった場合、盗難被害に遭った場合、どういう差がでるのか」
「軽自動車についてもナンバーが付いているので、それで所有者のデータと照らし合わせることはできるが、軽自動車検査協会が発行している番号なので、所有権を国が保障する機能がないということです」(国交省説明者)
普通車ユーザーからすれば、たったそれだけのことのために現在の登録料が定められ、システム開発や維持費に巨額な費用が使われているなら、それを廃止して検査料を引き下げてもらいたいと思うのは当然だ。
また、軽自動車や車検付きオートバイのユーザーの立場からすれば、国交省が説明する効果があるなら軽自動車やオートバイもMOTOSで登録されるべきだということになる。
国土交通担当者は、軽自動車は「安い…」と何度も言いかけて、何度も言葉を飲み込んだ。
本当に現行の登録料は国民の財産を守るためなのか。MOTOSの出費はシステムを維持して、仕事を作るためではないか。国土交通省の説明の不自然さが露呈した。
仕分け人の「(このシステムは全部の車両に)使うか、使わないかということではないか」という言葉に、すべては象徴されていた。