【池原照雄の単眼複眼】エンジン改良の奥深さを実証したマツダ

エコカー 燃費
SKYACTIV-G(スカイアクティブジー)
SKYACTIV-G(スカイアクティブジー) 全 5 枚 拡大写真

30km/リットルで登場する新デミオ

マツダが2011年前半に発売する新エンジン搭載の小型車『デミオ』で30km/リットル(10・15モード)のガソリン車最高燃費を達成する。中規模メーカーとして限られた開発資源をハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)でなく、内燃機関など既存技術の改良に振り向けた成果となる。HV並みの燃費実現は、エンジン改良の奥行きの深さも証明している。

マツダは次世代の環境対応技術について、ベースとなるエンジンや変速機の改良と車両全体の軽量化をまず進める方針を打ち出してきた。次いでアイドリングストップ装置、エネルギー回生システム、さらにHV(プラグイン方式含む)、EVへと段階的に電気デバイスの領域を広げる戦略を取っている。

エンジンなど改良した次世代ベース技術の総称を「SKYACTIV」とし、その第1弾が来年、デミオに搭載される1.3リットルのガソリンエンジンとなる。新デミオは外観は変更しないマイナーチェンジとし、「SKYACTIV-G」と呼ぶ新開発エンジンとアイドリングストップ装置「i-stop」との組み合わせで30km/リットルの燃費性能を確保する。

◆ノッキングを防ぐ2つの対策

このエンジンは燃料を直接、燃焼室内に吹き込む直噴方式であり、圧縮比は量産ガソリンエンジンでは世界で最も高い14としたのが最大の特徴だ。エンジンは圧縮比を高めると熱効率が高まり、燃料消費を節約できる。しかし、圧縮比を高めると異常燃焼(ノッキング)が発生するという二律背反にあり、ガソリンエンジンの圧縮比は通常10~12に設定されている。

SKYACTIV-Gではノッキングを防ぐため、大きく分けて2つの対策を講じた。ひとつは「4-2-1」方式による排気管システム。4気筒エンジンなので、各気筒の排気管4本をまず2本ずつに分けて合流させ、さらに1本にまとめるという方式だ。

コストを考えれば4本から1本にまとめる「4-1」方式が有利だが、複雑な4-2-1方式にしたのは燃焼を終えた気筒から出た残留排ガスの一部が別の気筒に排気管を通じて逆流するのを抑制するためである。極めて温度の高い残留排ガスの流入はノッキングの主要な原因であり、これを防ぐためにこの排気システムとした。

◆免税にしてやりたい程の価値がある

もうひとつの対策は「燃焼期間の短縮」である。高圧縮比エンジンでノッキングが発生しやすいのは、燃焼室内が高温高圧になるからであり、正常な燃焼が完了する前に、燃え残った混合ガスなどが自動着火する。これもノッキングである。

燃焼期間を短くしたのは、ノッキングが発生する前に先手を打って正常な燃焼を完了させるという考え方だ。そのために燃料噴射圧力の強化や噴射口の複数化などを採用している。また、ピストン上部の中央にくぼみ(キャビティ)を施し、燃焼をスムーズに広げる対策も取っている。

SKYACTIV-Gは、マツダの現行エンジン比で燃費および低・中速域でのトルクを、いずれも15%改善している。市場投入される時点では世界トップ級の環境性能をもったエンジンとなろう。高度な排気システムなどからコストが気になるが、山内孝社長は「皆さんに喜んでいただける価格にしたい」と宣言している。

エコカー減税ではHVやEVは次世代車ということで新車購入時の自動車重量税などが免除されている。同じクラスのHV並みの燃費を達成したガソリン車は、ご褒美として免税にしてやりたいくらい価値がある。

《池原照雄》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 2.5Lエンジンを搭載する『インプレッサ』登場、米2026年モデルに「RS」
  2. 新型アウディ『Q3』のインテリアを公開、「コラム式シフト」と新デジタルコックピットが目玉に
  3. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
  4. 21車種・64万台超、トヨタ自動車の大規模リコールに注目集まる…7月掲載のリコール記事ランキング
  5. シボレー『コルベット』がニュルブルクリンクで「米国メーカー最速ラップ」樹立
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. ブレンボが新ブレーキ開発、粒子状物質を削減…寿命も最大2倍に
  3. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  4. スズキ初のBEVはなぜ「軽EV」じゃない?『eビターラ』開発者が語る「EVの悪循環」と「スズキの強み」
  5. 湘南から走り出した車、フェアレディZやエルグランド…日産車体が量産終了へ
ランキングをもっと見る