【プリウス vs フィットHV 実燃費対決】250kmのロングドライブで燃費チャレンジ

エコカー 燃費
燃費比較の模様
燃費比較の模様 全 24 枚 拡大写真

エコカーが新車販売の売れ筋となるなか、10月には新たにホンダ『フィット・ハイブリッド』が登場した。コンパクトカークラスでは販売台数トップの『フィット』に、ホンダ独自のパラレルハイブリッドシステム「IMA(Integrated Motor Assist)」をセットアップし、燃費性能を高めたモデルだ。

そのフィットハイブリッドの燃費性能やドライブフィール、またハイブリッドシステムの味付けなどをチェックすべく、ロングドライブテストを行ってみた。比較モデルとして、4人乗り以上の乗用車としては今日、燃費性能ナンバーワンを誇る本格的なシリーズ・パラレル方式のハイブリッドカー、現行型トヨタ『プリウス Gツーリングセレクション』を走らせた。

◆都市部から郊外の一般道、高速道路までのトータル250km

ドライブコースは中野坂上をスタートし、首都高速道路湾岸線~東関東自動車道~千葉東金道路などを経由して九十九里浜の白子まで、高速走行を主体に100km弱を走行。その後、一般道を使って南房総の景勝地、勝浦の海中公園まで約46km、さらに房総丘陵を横断する上下勾配のきつい一般道の山岳路~東京湾横断道路を経由してゴールの築地まで100km強というもの。トータルでおよそ250kmというドライブだった。

ドライビングについては、ある程度省燃費を意識しながらも、他車の流れの妨げになるような運転はしないこととした。ちなみに両モデルとも全区間にわたって並走状態を維持しており、走行条件は両者、ほぼ同じである。

最初の白子までの区間、筆者がまずプリウスを、編集部スタッフがフィットハイブリッドを運転した。プリウスは3代目モデルとなる現行型になって高速側の燃費が改善されており、高速道路の第1走行車線を巡航したときの平均燃費計の表示は25km/リットルを超えたあたりで落ち着く。前方車両との車間距離が開いても加速せず、空走に近い状態を維持すればさらに燃費を伸ばせそうであったが、流れに乗ることを優先した。ほとんど渋滞なしのまま最初の目的地、白子に到着した時点では26.6km/リットル。途中、しばらく低速の一般道を走ったときに急激に燃費が伸びた。

◆中低速でほぼ同等、高速域で空力特性の差がでる

同じ区間、フィットハイブリッドの燃費は25.9km/リットル。運転者によれば、瞬間燃費計を見ていると90km/h台を超えたあたりに燃費が明確に落ち始めるポイントがあるとのこと。本格的な空力ボディをまとったプリウスとの違いが出るところだが、追越車線の流れに乗って走ったりしないかぎりはさほど不利にならないようだ。

白子では砂浜近くの駐車場で両モデルの写真撮影。この際に双方とも燃費を落とす。落ち込み幅が大きかったのは、低速で移動するたびにエンジン走行するフィットハイブリッドだった。

白子から勝浦までは、空いた一般道を走行。時折、市街地で信号ストップするが、基本的にはクルマの少ない地方道を60km/h前後でスイスイと巡航する、条件の良いドライブだった。ここでプリウスはプリウス特有の燃費テクを使わず、燃費を27.1km/リットルまで伸ばす。一方のフィットハイブリッドも撮影時の燃費の落ち込みをかなり取り戻し、25.4リットルに回復した。

◆ワインディングでも好燃費を叩き出すプリウス

最後のワインディング~東京湾横断道路のセクションはドライバーチェンジでトライし、筆者はフィットハイブリッドをドライブした。新型フィットは全般的にマイナーチェンジ前に比べてCVTが低回転を積極的に使うようにセッティング変更されたのに加え、省燃費走行モードであるECONモードが新設されたこともあって、普通に運転していても以前より好燃費を狙いやすくなった。が、アップダウンのきついワインディングロードではどうしてもエンジン回転が高くなる。東京湾横断道路の直前までは燃費はほとんど変わらず、高速道路に乗ってから燃費を稼ぐ格好となり、終点の築地に到着したときは25.8km/リットルという結果となった。

一方のプリウスは、ワインディングロードではエンジンを使うシーンが多いために燃費面では不利になるかと思われたが、運転者によれば、実際にはその区間でも燃費をきっちり積み増しすることができたとのことで、全区間を通じた燃費は27.5km/リットルとなった。

◆フィットはインサイトを凌ぐ実燃費が期待できる

燃費勝負で軍配が上がったのは、やはり高度なハイブリッド方式を使っているプリウス。ユーザーによる燃費計測サイト「e燃費」で見せている圧倒的な低燃費は伊達ではない。一方、フィットハイブリッドは昨年デビューした『インサイト』よりおおむね大人一人分軽量であることや、省燃費ドライブをしやすいようハイブリッドシステムのセッティングが変更されたことが功を奏してか、10・15モード燃費が30km/リットルと、プリウスに5.5km/リットルのビハインドを背負っているほどには実燃費での差はつかなかった。

トヨタ、ホンダ、日産がハイブリッド車のラインナップ増強を宣言し、スバルや海外メーカーも日本市場へのハイブリッド車投入をほのめかすなど、ハイブリッドモデルの選択肢は加速度的に増えていく可能性が濃厚だ。ユーザーの側から見れば、燃費良く走れるクルマがより手軽に買えるようになるという状況は、喜ばしい限りである。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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