密度の高いボディ。メルセデスに対峙すると、どうしてもこんな言葉が浮かんでしまう。同じ大きさでも、こっちの方が重い気がしてならない。乗り込んだときの重厚感と包み込むような安心感がそう思わせるのか。
試乗車はディーゼルエンジンである。MLの背が高くて重いはずのボディを、そんなことはまったく感じさせずにぐいぐいと運んでいく。さすがのトルク感である。もちろん密閉度の高いボディは、ディーゼル独特の音も振動も遮断する。車外に出たときに聞こえてくるディーゼルらしさは、忘れるくらいの静かさだ。
ところで「いやあ、やっぱりディーゼルの突き飛ばされるようなトルクはすごい」と、先に試乗していたジャーナリスト諸氏が言うものだから、どれだけ初速からどかんと速いのかと思ったらそうではない。最初の反応は逆ににぶいくらいで、どかんとくるのは、ぐっとアクセルを踏み込んだとき。ここで初めて「うわーっ」と感激の加速感が味わえるのである。
つまり、トルクがあまりにもあるので、ちょこんと踏んだだけで飛び出してしまうと危ないと判断したのだと思う。自分の意思でここぞというときに踏み込んで、それに反応するというのがメルセデスのディーゼルエンジンの特徴なのだ。確かに日本のクルマたちは、楽しようというおじさん連中が、アクセルを踏んだ瞬間からがっと出ないと「遅い」だの「もたつく」だのと言い、それゆえにアクセル早開き傾向に走るのだが、それはいかがなものか。ペダル踏み間違い事故も、案外そんなところも起因しているのかもしれないよ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。