大矢アキオの『ヴェローチェ!』…イタリア警察車に外国車続々採用

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エグゼオSTイタリア交通警察仕様
エグゼオSTイタリア交通警察仕様 全 8 枚 拡大写真
「公共入札の透明性を向上する政令」により変化

クリスマスを前に、イタリアの路上では各警察組織のパトロールカー検問を多く見かけるようになった。国家警察(ポリツィア)、軍警察(カラビニエリ)、都市警察は飲酒運転や無免許運転の取り締まり、そして財務警察は密輸品などの摘発といったところだ。

そうしたなか11月、イタリア高速警備隊に新車58台が納入されることになった。といってもイタリア車ではない。フォルクスワーゲン(VW)グループのスペイン法人であるセアト製『エグゼオST』である。

エグゼオはセアトの最高級車で、2008年にセダン、翌09年にワゴン版STが発表された。フロントこそセアト系モティーフだが、基本的には先代アウディ『A4』である。まさに「A4のアウトレット」感覚だ。高速警備隊用は2.0リットル・ターボディーゼルの143馬力版である。

なお今回の図式は、ちょっと複雑だ。入札を実施したのはイタリア最大の高速道路会社「アウトストラーデS.p.A」である。VWグループ・イタリアがアウトストラーデ社に納入する車両を、イタリア国家警察の高速警備隊が運用するというかたちだ。

実は、セアト・エグゼオSTのベースとなった先代アウディ「A4アヴァント」も、すでに各地のイタリア高速警備隊に納入されるようになって久しい。

また04年にランボルギーニ社から『ガヤルド』1台が寄贈されたのは、ファンならご存知のとおりである。翌年にはもう1台のガヤルドが寄贈され、08年には第1号と交代するかたちで、第3号が納められた。

ちなみに、2台のガヤルドのうち1台は2009年11月に事故で大破してしまった。イタリアで納税している筆者としては、たとえ寄贈車とはいえ自分の車が壊されたようで、なんとも複雑な心境だ。

BMWやスバルもイタリア警察車の納入レースで健闘している。スバルは国家警察に『レガシィ』を近年多数納入しているほか、財務警察や森林警備隊には『フォレスター』などの納入実績がある。シトロエンは過去に各地にあるイタリア財務警察に『サクソ』(日本名『シャンソン』を大量納入したことがある。

イタリアの公用車は、06年に欧州連合(EU)の指針を受けて施行された「公共入札の透明性を向上する政令」により、原則として入札価格が最も安かったメーカーのものを採用している。それ以前もイタリア国家警察では内務省の指針によって、パトロールカーの一定数は、外国車に割り当てる方針があった(関係者)という。

今後こうした方針が強化されると、過去に警察組織に最も納入実績のあるアルファロメオのシェアも、けっして安泰ではなくなるだろう。とくにフィアットグループが『159』の後継車を北米市場に対応すべく、よりプレミアムな高価格傾向に振ると、入札では不利にならざるを得なくなる。公営企業時代から続いた「イタリアの警察車=アルファロメオ」の伝統は、過去のものとなる公算が大きい。

ところで以前国家警察官に聞いたところ、「どの車両に乗務するかは勤務シフトによる」らしい。先輩・後輩といった序列は車両のグレードに反映されないとのことだ。しかし前述のガヤルドパトカーは、毎回サービスエリアに入るやいなや、一般ドライバーたちに取り巻かれ、隊員は若い女性に一緒に記念写真を頼まれたりしている。そうした光景を見ると、どの隊員も、「いつかはガヤルド」と心の奥底で思っているに違いない。

大矢アキオの欧州通信『ヴェローチェ!』
筆者:大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)---コラムニスト。国立音楽大学卒。二玄社『SUPER CG』記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わずファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』のレポーターをはじめ、ラジオ・テレビでも活躍中。主な著書に『カンティーナを巡る冒険旅行』、『幸せのイタリア料理!』(以上光人社)、『Hotするイタリア』(二玄社)、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)がある。

《大矢アキオ Akio Lorenzo OYA》

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