ミニバン戦国市場の日本において、求められるものは、シートアレンジの多彩さ。でも、このところ、ひとりで乗ってもちゃんと走るクルマが求められてきた。
…とは言ってもねえ。多少、走りがよくても、トータルパッケージとしてドイツ車が、よーっくできた国産ミニバンを上回るとは思っていなかったのだ、正直のところ。
しかし、アクセルを踏んだ瞬間の、やばいくらいの軽快さはどうよ? あの、このエンジン、1.4リットルでしたよねと、思わず確認してしまうほどの加速感。そりゃ、ツインチャージャーで、すでに『ゴルフ』などで定評のあるトルクフルなエンジンというのは理解しているつもり。でも、その認識をはるかに上回る、この大柄なミニバンボディをたちどころに前へと押しやる味付けといったら、唖然である。しかも、アイドリングストップまで装備してあり、エコ対策もばっちり。これ、国産メーカー、やばくない?
たしかに、センターにはシフトレバーやらがあって、ウォークスルーはできない。ついでに、セカンドシートはひとつずつが独立タイプになっていて、フラットシートにはできない。けれど、三列目を倒しておけば、荷物スペースは広いし、二列目も併せて格納すれば、フラットで自転車も運べそうな広い空間ができあがる。ボディ剛性がしっかりしているから長距離ドライブで運転手担当のオトーサンとしても、これなら疲れも少なかろう。両側電動スライドドアというのも、子育てオカーサンの興味をひくところだ。
TSIエンジンの熟成により、VWのミニバンが俄然、魅力的にみえてきた。
■5つ星評価
パッケージング:★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。