新型『MRワゴン』は外観デザインの方向性を変えてきた。これまでのモデルは子育てママを意識したものだったが、今回のモデルは男女を問わず受け入れられる方向を目指したからだ。新しいデザインは個性的だが、親しみやすさなどが薄れた感もある。逆にそうした違和感を感じさせるような狙いがあるのだろう。
インテリアはピアノブラック風のタッチパネル式のオーディオが特徴。これまでにない斬新な質感が表現されている。液晶画面に後方視界を映し出すバックモニター付きになったので、いっそのことメモリータイプのカーナビまで装着したら良かったと思う。
ホイールベースを延長した新プラットホームの採用で、室内空間が広がった。ボディサイズの制約が大きい室内幅はともかく、室内長は十分な広さが確保され、廉価グレードを除いて後席にはスライド機構が備わる。
搭載エンジンは新開発のR06A型エンジンで、吸排気VVTの採用などによって低速トルクや燃費を向上させたほか、静粛性を向上させている。動力性能の数字は変わらないが、低速域でのトルク感が増したので、より扱いやすい印象だ。
副変速機付きCVTとの組み合わせによって自然吸気エンジンの搭載車で25.5km/リットルの燃費を実現したのも良い。アイドリングストップ機構は設定されていないが、これくらいの燃費が出ているなら文句はない。
最も好印象だったのは静粛性が向上したこと。最近は軽自動車も静粛性の向上が著しく、ダイハツの『ムーヴ』も相当に静かなクルマに仕上がっていたが、それと互角以上と思わせるくらいの静かさだ。少なくとも従来のスズキの軽自動車の水準を超えている。
足回りは乗り心地を重視してかなり柔らかめの印象。ターボ仕様車などはもう少し硬めでも良いと思った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。