ホンダ インターナビ がどこよりも早く災害情報を提供できるのはなぜか

自動車 テクノロジー ネット
インターナビ推進室室長 今井武氏
インターナビ推進室室長 今井武氏 全 21 枚 拡大写真

4月27日、ホンダは東日本大震災の被災地域における渋滞実績情報の提供を開始した。

新たに表示する渋滞実績情報は、ホンダの「インターナビ・リンク・プレミアムクラブ」会員の車両から収集した走行実績データ「フローティングカーデータ」のうち、前日の渋滞情報を処理したもの。この情報は、Google自動車通行実績情報マップとYahoo!地図で広く公開する。

インターナビでは、会員のフローティングカーデータを活用した災害時の情報提供に取り組んできており、3月11日に発生した東北関東大地震では、いち早く通行実績情報を提供した。インターナビ事業室室長の今井武氏、同室の野川忠文氏、菅原愛子氏の話を交えて、災害情報提供の活動を振り返る。

◆2004年から災害情報を提供

インターナビでの災害情報提供は2004年に遡る。この年、目的地までのドライブに影響する気象情報提供をスタートし、2007年には豪雨地点予測や凍結そして地震など防災情報の提供をスタートした。

このうち地震情報は、2009年に機能が強化された。震度5弱以上地震が発生するとナビの地図上に震度に応じて色分けされたカラータイルが表示され、津波発生の恐れがある場合は津波注意報・津波警報・大津波警報の段階によってイラスト表示をおこなうというもの。地震が発生していない、あるいは震度4以下のエリアにいる際も、目的地やそのルート上に強い地震発生のエリアに含まれている場合は、警告を出す仕組みも用意される。

また、これと同時に車両が震度5弱以上のエリアにいた場合、事前に登録した家族のメールアドレスに居場所(最新の通信位置)を知らせ、「要支援」「大丈夫」といった安否の連絡もおこなえる「位置情報付き安否連絡」も提供を始めた。

◆フローティングカーデータを活用した通行実績マップを公開

こうしたインターナビ会員向けのサービスとともに、行政や研究団体を協力してフローティングカーデータの通行実績データを活用した災害対応にも取り組んできた。

まず2004年に発生した新潟県中越地震のデータを用いて、共同で災害時に通行可能な道路を把握できるかを検証。さらに2007年に発生した新潟県中越沖地震では、防災推進機構と共同で通行実績マップを初めて一般公開した。翌2008年に岩手・宮城内陸地震では、インターナビ単独で通行実績マップを公開した。マップはGoogle Earthなどで読み込めるKMZ形式で提供された。

2009年には、救援・避難の情報支援を目的として、通行実績マップを発展させるかたちで「災害時移動支援情報共有システム」をインクリメントP・ゼンリンデータコムと共同で運用をスタートさせている。

通行実績データは個人情報を特定できるデータをすべて排除しているが、2005年にWeb上での公開をスタートさせるに当たって部内でも「こうした情報を世の中に公開してもいいものなのか」(インターナビ事業室の菅原愛子氏)という議論があった。しかし、「こうした情報は、他では入手できない貴重なデータであり活用法はある。がんばって続けるべきだ」といった意見や、インターナビ利用者からもアンケートで「実際、役に立った」「リスクを説明した上でサービスすればいい」といった声が寄せられたことが、彼らの背中を押したという。

◆地震発生翌日に通行実績マップを公開、3日後にはGoogleマップにも

そして2011年の3月11日に東北関東大地震が発生。インターナビ事業室の本拠である和光も震度5強の地震が襲った。

スタッフの無事とインターナビサーバーの安全が確認できると、インターナビ事業室室長の今井武氏は、「このような時こそわれわれの真価が問われる。もっと何かできないか」とインターナビとして災害時にできることをスタッフ達で考えたという。

これまで何度も実施している通行実績マップの提供はもちろんすぐにも可能だが、「(通行実績マップを利用するには)Google Earthなどソフトが必要で、まだ一般への周知という点では物足りない。震災の対応として、通行実績マップだけでいいのかという話があった」(インターナビ事業室 野川忠文氏)という。

そこで出てきたのがGoogleマップでの通行実績Web地図(Google Crisis Response 自動車・通行実績情報マップ)の公開だ。

「2010年にスタートしたGoogleローカル検索などの協業をはじめとして、Googleとは継続的に連絡を取っていました。また、このような災害時に両社で協力できないかということも話し合っていました。大地震の発生した12日にはインターナビのサイトで通行実績マップ(KMZ)を公開。合わせてGoogleに連絡して、Googleマップ向けにデータを準備していること伝え、14日にはGoogleマップ上に通行実績地図が公開されました」(野川氏)。

このスピード感ある両社のマッシュアップはTwitter上でも話題を呼び、トヨタ、日産、パイオアニアなどもホンダに続いて通行実績データの提供をスタートした。なお、インターナビのサイトで公開したKMZファイルは4月下旬の時点で累計ダウンロード数は4万8000にものぼっている。

各社が通行実績データの提供を始めたことで、3月23日にはITSジャパンが各社のデータを集約してデータ提供を開始。各社が提出する通行実績データの形式や時間区分(前日24時間の実績データを午前10時に更新)はインターナビの方式にのっとって仕様が定められたという。

他社に先駆けて始めたフローティングカーデータの活用と7年に及ぶ災害情報の取り組み実績、そしてインターナビチームの熱意が、いち早い情報提供と状況に応じたフレキシブルな対応を可能にしている。

《北島友和》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ゴミ回収箱に人が入ることは予見不能
  2. 「さすが俺達の日産技術陣!」日産の新型EVセダン『N7』にSNS反応、「カッコ良すぎないか」などデザイン評価
  3. ヤマハの125ccスクーター『NMAX 125 Tech MAX』が世界的デザイン賞、ヤマハとしては14年連続受賞
  4. ホンダ『モンキー』イベントに過去最高の550台超が集結!「自腹」でも続ける「二輪文化継承」への思い
  5. ショッピングセンターに320台の名車・旧車が大集結…第5回昭和平成オールドカー展示会
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. AI導入の現状と未来、開発にどう活かすか? エンジニアの声は?…TE Connectivityの独自リポートから見えてきたもの
  2. トヨタ「GRファクトリー」の意味…モータースポーツのクルマづくりを生産現場で実現【池田直渡の着眼大局】
  3. 住友ゴム、タイヤ製造に水素活用…年間1000トンのCO2削減へ
  4. EVシフトの大減速、COP消滅の危機…2024年を振り返りこの先を考える 【池田直渡の着眼大局】
  5. 【学生向け】人とくるまのテクノロジー展 2025 学生向けブース訪問ツアーを開催…トヨタ、ホンダ、矢崎総業、マーレのブースを訪問
ランキングをもっと見る