【池原照雄の単眼複眼】三菱のEV、車種拡充で採算ラインに接近

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三菱 i-MiEV現行
三菱 i-MiEV現行 全 6 枚 拡大写真

廉価 i-MiEVと商用車、北米専用車を投入

三菱自動車工業が電気自動車(EV)の拡充に動き出した。今夏に国の補助金を控除すると購入者の負担が200万円を切る『i-MiEV』の廉価タイプを投入するのに加え、軽自動車をベースにした商用車モデル2タイプも年末に売り出す。

秋には北米市場にも進出し、2011年度の世界販売は前年度の3倍に相当する2万5000台(OEM供給分含む)を計画している。参入時に採算レベルとしてきた年3万台に当初の想定を上回るペースで近づけ、事業基盤を固める年とする。

i-MiEVは09年7月の発売から2年を経過するこの夏に一部改良を行うとともに、価格の安いエントリーモデルを追加する計画だ。同モデルはEVのコスト高の最大要因である2次バッテリー(リチウムイオン電池)の容量を小さくすることで、求めやすい価格にする。

◆商用車も2タイプの電池容量を設定

どの程度容量を削るのかは明らかにしていないものの、年末に発売予定で4月から予約受注を始めている商用車モデルの『ミニキャブMiEV』が参考になる。この商用車の場合、バッテリーは現行i-MiEVと同じ16kWhと、その約3分の2の10.5kWhの2種類を用意している。

JC08モードによるフル充電からの航続距離は、約150kmと約100kmになっており、当然のことながらバッテリーの容量に比例する。三菱は昨年10月からヤマト運輸と商用車EVの実証実験を行い、特定のルートを巡回する貨物車の場合、バッテリー容量(=航続距離)を小さくしたモデルも実用に耐えると確認した。

ミニキャブMiEVの場合、小売価格から国の補助金を控除した実質的な負担価格は、10.5kWh仕様車で170万円程度、16kWh仕様車で205万円程度となっており、ガソリン車より割安なランニングコストを考慮すると、補助金頼みではあるものの「普及価格帯」に近付いてきた。

i-MiEVのエントリーモデルのバッテリーも、販売価格などから勘案すると、恐らく10.5kWhタイプが採用されるのだろう。バッテリーユニットや制御システムなどの共用化を考えれば、合理的な選択となる。仮に航続距離がJC08モードの半分としても50km。近距離通勤や日々の買い物などの用途には耐えうる。

◆12年度には4万台超を目指す

バッテリー容量を小さくすると、航続距離は不安になるものの充電時間が短縮できるというメリットもある。200ボルトで普通充電する場合、ミニキャブMiEVの大容量仕様車はフル充電まで7時間かかるが、小容量仕様車は4.5時間で済む。

三菱は現在、日本と欧州が販売の中心となっている i-MiEVを、今年11月からは北米にも投入する。米国人などの体格に合わせ、車体の幅を広げた専用仕様として、市場への浸透を図る構えだ。

同社の益子修社長は、i-MiEVの発売を前にした09年春の時点では、採算ラインを年3万台とし、そこに達するのは13年ごろと見込んでいた。しかし、現在では「12年度には4万台を上回る販売を確保し、EVビジネスを確立したい」と、前倒しを目論む。

今後は国内外で補助金頼みからの脱却という大きなハードルが待ち構えることになるものの、乗用、商用ともEVの特性が生かしやすい近距離コミューターに特化した事業展開は、今のところ順調に回っている。

《池原照雄》

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