大矢アキオの『ヴェローチェ!』…イタリア公用車がダウンサイジング

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国立シエナ大学前で。ランチア・テーマ
国立シエナ大学前で。ランチア・テーマ 全 6 枚 拡大写真
 ダメ、ゼッタイ? 1600cc超

公用車の排気量の上限を1600ccに---。イタリア政府が財政再建策の一環として法案に盛り込むべく、2011年6月から検討を重ねているものだ。

ただし共和国大統領、首相、上下両院議長、最高裁判事の5名用と、装甲仕様車は、この1600cc規定から除外される。法案ではさらに、「公用車は決定的な消耗もしくは廃車状態になるまで、交換してはならない」としている。

数種の統計があるものの、現在イタリアで政府、国家機関、国立大学などが使用する公用車の数は約9万台といわれる。これはアメリカ合衆国の7万2000台を上回る数だ。年間維持費用は、保険・リース代・運転士の給与などで総額40億〜50億ユーロ(約4500億〜5600億円)に達する。これを少しでも抑えることによって財政再建の助けにしようというのがイタリア政府の狙いだ。

筆者が考えるに、もしこれが正式に決まると、フィアット・グループも少なからず影響を受けるだろう。アルファロメオ『159』とマセラティ『クアトロポルテ』は、イタリア国内で公用車需要が高いモデルであるが、いずれも1600cc枠に収まるモデルは存在しない。提携先のクライスラー『300』をベースとし、まもなく発売される新型『テーマ』も3リッター級である。

1.6リッター化によって利幅の大きいマーケットの一角が縮小されることは、同社の高級車政策に方針転換を迫るだろう。

そのいっぽうで筆者はイタリア政府高官の気持ちになり、1600cc級、かつそれなりに見栄えのするモデルを欧州現行市販車のなかから探してみた。

結果はかなり厳しく、ようやく見つけた数少ないモデルはフォルクスワーゲン『パサート』やボルボ『S80』といったところであった。アウディはたとえ『A4』でも該当車なし、レクサスは全滅である。

法案では大臣級も例外規定が適用されない。したがって、小さいクルマで登場する真面目なイタリア閣僚をテレビで目撃しても、節約に努めているということでどうか笑わないでいただきたい。まあ「自腹でクルマをチャーターする」「装甲仕様を手配してもらう」など、さまざまな策を練る大臣も充分想像できるが。

大矢アキオの欧州通信『ヴェローチェ!』
筆者:大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)---コラムニスト。国立音楽大学卒。二玄社『SUPER CG』記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わずファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』のレポーターをはじめ、ラジオ・テレビでも活躍中。主な著書に『カンティーナを巡る冒険旅行』、『幸せのイタリア料理!』(以上光人社)、『Hotするイタリア』(二玄社)、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)がある。

《大矢アキオ Akio Lorenzo OYA》

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