【池原照雄の単眼複眼】達成は厳しくも待望のCAFE導入…20年度燃費基準

エコカー 燃費
志賀俊之自工会会長(8月31日)
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◆目標値はJC08モードで20.3km/リットル

乗用車の2020年度燃費基準の政府案が公表され、ポスト15年度基準の骨格が固まった。全体ではJC08モードで09年度実績比24.1%の改善を目指す高いハードルとなる一方、新たにメーカー各社の燃費を加重平均する「企業別平均燃費基準」(CAFE=Corporate Average Fuel Efficiency)方式が導入される。

普及が本格段階に入る電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)については基準値を設定せず、規制の対象外とする。だが、こうした先進環境車の開発を支援するためEV、PHVそれぞれに特定の燃費評価方法を導入し、各社のCAFE基準値算定に反映させることになる。

政府の推計によると、現行の15年度基準への適合が完了した場合の1台あたり平均燃費は17.0km/リットル。それが20年基準では20.3km/リットル(いずれもJC08モード)となり、両基準間の改善率は19.6%に及ぶ。日本自動車工業会の名尾良泰副会長は「基準値案は極めて厳しい水準」と評すが、「燃費性能は商品競争力の大きなファクターというのが各社の認識。必達に向けて取り組むことになる」と話す。

◆かねて業界の要望だった…

新たに導入されるCAFEについては、「得意とするセグメントで、未達となるところを一定程度カバーできるのでインセンティブになる」(志賀俊之自工会会長)と、総じて前向きの評価だ。関係者によると、自動車業界は15年度基準を策定する時にもCAFEの導入を要望しており、ほぼ5年越しの実現となる。

CAFEは、それぞれ細かいところでは基準が異なるものの、欧米で定着している方式だ。環境性能の追求で「選択と集中」が可能になるほか、欧米方式と同じ手順で燃費規制への対応を検討できるため、グローバルな商品企画などもスムーズに進むと期待されている。

最先端のエコカーであるEVとPHVは、普及初期段階にあるため、燃費基準の設定は見送られる。ただし、それぞれ特定の燃費評価法を導入して各社のCAFE基準値に算入される。EVでは走行の際の消費電力量を発熱量に転換し、さらにガソリン使用量に換算する方式を採用する。

自工会首脳によるとEVの燃費(電費)は「50km/リットルを上回るレベルに換算されるイメージ」だという。また、PHVについてはEV走行分はEVの評価法と同じにし、それとガソリン消費量分を複合させて算出する。

◆EV、PHVのCAFE算入は全体の1割まで

ただ、実際に企業別のCAFEを算出する時は、EVおよびPHVをカウントから除いた状態でも、ガソリン車や通常のHVなどによってその企業のCAFE基準値の9割を達成するよう、しばりがかけられる。つまり、EVとPHVが関与できるのは同基準値の1割までとなる。

一方、現行の15年度基準は車両の重量によって燃費基準を定める「重量区分」方式となっているが、20年度基準でも重量別の基準値は残される。CAFE基準値は重量区分の基準値と出荷台数によって積算されたうえで、加重平均されるからだ。

また、重量別の基準値は減税など優遇措置を講じる際、「20年度基準プラス75%達成車」といった具合に、個別車両の性能判断にも必要となる。オプション部品などで重量をカサ上げし、減税額を増やすなどの抜け道は依然残されるが、制度設計上やむを得ないところか。

《池原照雄》

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