【インディジャパン インタビュー 後編】アメリカンモータースポーツの醍醐味とは何か…ツインリンクもてぎ元総支配人 高桑元 氏

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ツインリンクもてぎ元総支配人 高桑元 氏
ツインリンクもてぎ元総支配人 高桑元 氏 全 12 枚 拡大写真

ツインリンクもてぎで9月16〜19日に開催が予定されている「インディジャパン ザ ファイナル(INDY JAPAN THE FINAL)」。その名称からも分かるように、今回のレースをもって日本で開催されるインディカーは一旦終止符を打つ。ツインリンクもてぎの元総支配人 高桑元氏へのインタビュー後編では、レースにエンターテインメント性を持ち込むためのエピソードとモータースポーツの発展に向けた展望について語っていただいた。

レースを楽しめる工夫を設計に盛り込む

----:オーバルの設計についても、エンターテインメント性を高める工夫は盛り込まれているのですか。

高桑:アメリカの視察を通じてオーバルのコースは1〜1.5マイル程度が最適なスペックということが分かりました。ここでいう最適とは、見ている人が楽しめるという意味です。さらに、バックストレートにもバンクを付けたうえ、ホームストレートに比べてバックストレートの高さを上げています。これなら、グランドスタンドからほぼ全てのコースが見え、レースの成り行きを把握できます。

----:工事は順調に進んだのですか。

高桑:非常に大がかりな工事でした。ここは非常に山がちな地形で、7つくらいの山を削ってコースを整備しました。例えば、オーバルの第3ターンのあたりは、もとは谷だったのでおよそ70m土を盛っています。これほどの大工事を要したのは、他に土地がなかったからなのです。こういう土地じゃなければとっくにゴルフ場になっていたでしょうし。

----:ロードとオーバルではコースの一部を共用するのではなく、2つの独立したコースとなりましたね。

高桑:当時は各地のレーシングコースの稼働が100%に近かったという状況でした。需要の多いロードコースの稼働率を下げずに、そしてアメリカンモーターレーシングの新しい挑戦のため、オーバルコースを独立して使用できるよう、それぞれ別のコースとしました。理論上では双方のコースで別々のレースを実施することが可能です。マーシャルや安全上の都合もあり大規模なレースでの同時使用はまだ実施していませんが。

◆モータースポーツを根付かせるためには、運営側のハートが大事

----:1991年のプロジェクト発足から6年越しで完成となりましたが、オープンした時の感慨は大きかったのではないですか。

高桑:オープン前の、さまざまなイベントをスケジューリングして切り回していたころは楽しかったですね。ですがオープン1カ月くらい前からはこれだけ大きな施設を開業させることのプレッシャーで逆に憂鬱になってきましたよ(笑)。オープン後はそれこそ無我夢中で、1戦1戦が必死な思いでした。2輪も4輪もトップカテゴリーのレースは全て実施しましたし、花火も飛行機も気球といったイベントも充実させてきました。陸だけでなく空の世界も含めてモビリティは全てやる、そして新しい楽しさを生み出していこう、という気概で企画をできたことには満足感はありました。オープンから1年あまりで鈴鹿への異動を言い渡されたときは非常に後ろ髪を引かれる思いでしたが、2003年から退職までの最後の3年間を再びもてぎで過ごすことができたのは、ありがたかったですね。

----:今回のレースでインディジャパンは一旦終止符を打つことになります。また震災の影響でオーバルコースがダメージを受け、ロードコースでの実施となりました。

高桑:私はオーバルが無かろうとインディが無かろうと、我々のハートが大事だと思っています。どういう事かというと、ここツインリンクもてぎでしかできないレースをいかにして大勢のお客さまに見ていただき、楽しんでいただくかということです。退職してからは経営にはタッチしておりませんので具体的な運営は分かりませんが、今回、ロードコースでの実施となるにあたって、ピットは通常のロード用ピットではなく、グランドスタンドにより近いオーバルのピットエリアを使うと聞いています。オーバルのピットの建屋はオープンですから、スタンドからはよく見えます。オーバルが使えないという不運はありますが、それでもピットを移設してまでお客さまの間近で見せるエンターテインメントへのマインドが感じられました。

----:日本人選手への期待は。

高桑:大いにしています。レースの盛り上がり的には、日本人選手がいるといないとでは大きな違いもありますし、今年は佐藤琢磨選手がポールポジションを2回とっているので、もてぎでも十分優勝のチャンスがあると期待しています。

◆面白いレースになることは間違いない

----:ツインリンクもてぎが目指すべきレースの姿とはどういうものでしょうか。

高桑:この場所だからできるレースを定着させてほしいですね。例えば、鈴鹿8耐のような。インディ500にしてもそうですが、単なるレースではなくて年に一度のお祭りなのですね。さまざまなところからお客さんが集まってレースを観戦して、イベントも楽しむ。そういうことが根付けばモータースポーツの裾野が広がり、楽しみ方ももっと変わってくると思います。

----:最後に、今年のインディジャパンの見どころをお聞かせください。

高桑:13年前から日本でCARTとインディをやってきて、中止になったことは一度もありません。オーバルのレースは雨が降ると実施できませんから、アメリカでのシリーズ戦では時々雨のために中止になってしまうこともあります。雨の多い日本ですから2日間つづけて降ることもあると思ったのですが、初日に雨が降って順延ということはあっても中止になったことはありません。ロードコースの場合はレインタイヤがあるので、雨でも実施できますから、天気を心配する苦労がないのはうらやましいなあ、と(笑)。

とにかく、インディジャパンではF1、GTやFニッポンとはまた違う、アメリカ生まれのレースならではの雰囲気を楽しんでいただけるのではないかな、と。オープンなピットやイーブンのマシンコンディションによる接戦など、ロードレースであっても面白いレースになることは間違いないでしょう。私は今回のインディジャパンが最後とは思っていません。F1もすぐに復活しましたし、遠からぬ再開を期待しています。すくなくともスタッフはそういう心意気でやって欲しい。私もひとりのレースファンとして、今年のインディジャパンを大いに楽しみにしています。

《まとめ・構成 北島友和》

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