大矢アキオの『ヴェローチェ!』…美しい国を悩ます「駐車場塞ぎ」

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DIYセンターの駐車場に放置されたフィアット・パンダ。
DIYセンターの駐車場に放置されたフィアット・パンダ。 全 4 枚 拡大写真
 こんなモデルがなぜここに、というのも

イタリアの大都市は、欧州のなかでも駐車場の獲得競争が激しい都市として有名である。それを増幅させているのは、スペースを塞ぐ放置自動車だ。

放置自動車の数は各地の自治体の頭を悩ませている。南部シチリアの地元都市警察が2011年夏に発表したところによると、確認できるものだけでも市内には2000台の放置自動車があるという。ローマの場合、その数は約10万台といわれ、放火されるケースも多い。これにスクーターなど2輪車の放置も加わる。

こうした放置自動車は、持ち主の所有権が継続しているため、法律上処理が困難だ。所有者に警告文を発送したり、滞納している自動車税を徴収する事務手続きの人手も足りない。撤去用レッカー業者に払う予算を充分に確保できないのも問題を深刻化させている。盗難車が放置された場合は、違った意味でユーザーの特定が困難になる。

ちなみに放置自動車による駐車場不足に追い討ちをかけるのは、駐車場の荒廃だ。ローマ市役所は2011年9月、ひとつの市営駐車場を閉鎖した。夜間に敷地内で寝泊りする人物がいたり、駐車スペースにゴミが山積みにされたためで、利用者や周辺住民の安全上問題があることから150台の車両収容能力があるにもかかわらず閉鎖を決めた。

美しい国を意味する「ベルパエーゼ」とはイタリア人が自国の別称としてよく用いるもの使うものあるが、駐車場に関していえば到底ベルパエーゼは当てはまらない。

イタリアやフランスでは、公共や路上の駐車場のほかでもたびたび放置自動車問題が浮上する場所がある。ひとつは公立病院で、身寄りのない高齢者などが入院したまま不幸にも死んでしまい、自動車だけが駐車場に残されるためだ。もうひとつは空港駐車場への放置である。長期駐車に見せかけることができるため、放置と見抜くまで時間がかかる。

筆者の自宅に最も近いイタリア・フィレンツェの空港駐車場は地方空港であるにもかかわらず、明らかに長期間放置されたと思われるものが少なくとも3台ある。

その1台はなんと英国ナンバーで、車両は1980年代の三菱『ミラージュ』がベースのマレーシアの初代『プロトン』だ。プロトンはイギリスではそこそこ売れたが、イタリアで正規販売された記録はない。なぜドーバー海峡の向こうの車が遠くイタリアの空港に置き去りにされたのか? こちらの別荘で使っていた車をそのまま放置したのか? このように、いきさつを考えると眠れなくなってしまう放置自動車も、ときおり見かける。

大矢アキオの欧州通信『ヴェローチェ!』
筆者:大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)---コラムニスト。国立音楽大学卒。二玄社『SUPER CG』記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わずファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』のレポーターをはじめ、ラジオ・テレビでも活躍中。主な著書に『カンティーナを巡る冒険旅行』、『幸せのイタリア料理!』(以上光人社)、『Hotするイタリア』(二玄社)、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)がある。

《大矢アキオ Akio Lorenzo OYA》

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