7年振りのフルモデルチェンジを受けた新型『SLK』は今回のモデルが3代目。電動開閉式のハードトップを持つ2シーターのオープンスポーツという基本コンセプトは変わらない。
グリルに大きなスリー・ポインテッド・スターを配したフロント回りのデザインは、『SLS AMG』や『CLS』などと共通のイメージ。置かれていた試乗車を見たときに、これSLKじゃないよな、と思ってほかのクルマを探したほどだった。
でも、必ずしもそれが良いということではない。グリルに迫力を感じさせるデザインを採用するのはアウディのシングルフレーム以降の世界的な流れだが、押し出しの強すぎるデザインは個人的にはあまり好みではない。SLKには独自のデザインを採用して欲しいところだった。
一新されたパワートレーンは4気筒がスーパーチャージャー仕様から直噴ターボ仕様になり、V型6気筒は完全に新設計のリーンバーン仕様になってともに動力性能と燃費を向上させている。今回試乗したのは「SLK350ブルーエフィシェンシー」で、AMGスポーツパッケージンやナッパフルレザーパッケージ、キーレスゴーなどがオプション装着されていた。
新しいV6エンジンの印象はとにかく滑らかでパワフル。軽くアクセルを踏み込むだけで大きなトルクがクルマを前に押し出していく。この加速感はとても気持ちの良いものだ。
改良を受けて7GトロニックプラスになったATは、相変わらず何速で走っているのか分からないくらいに滑らかな変速フィールを示す。
クルージング状態に入れば、リーンバーン燃焼に切り替わって燃費の良い走りを実現する。成層燃焼とリーンバーンを組み合わせたエンジン制御は最先端のものだ。さらに停車時のスタート/ストップ機構と合わせて従来のモデルに比べて大幅な燃費向上を達成している。
このスタート/ストップ機構は、信号待ちなどで一旦停車した後、前のクルマが動いたので少し前に前進したときなども二度、三度とエンジンが停止する。
これができるのもメルセデスベンツのアイドリングストップ機構だけ。実際にこうしたシーンに遭遇することは多いので、とてもうれしい仕様だ。
試乗では空いた首都高環状線などを走らせたが、とても軽快かつ気持ち良く走らせることができた。これはSLK350に標準装備されるトルクベクトリングブレーキやダイレクトステアリングなどによるところも大きい。
ルーフをオープンにするときの所要時間は20秒以下とスムーズで、決して勧められないが低速でなら走行中にも開閉できる。オープンにしたときにはエアガイドを操作すれば風の巻き込みを防いでくれるので、オープンエアの快適性が一段と高まった。
スポーツカーとして考えたら当然ながらSLK350だが、女性や年配のユーザーなどがセカンドカー的な乗り方をするなら、500万円台で買えるSLK200ブルーエフィシェンシー系のグレードも良いと思う。
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。