すでに崩壊が始まっている
2012年度の税制改正に向け、自動車税制改革フォーラムなどが7日に記者会見し、関係諸税の簡素化と負担軽減を強くアピールした。09年度から3か年の予定で実施中のエコカー減税も来春には終了するため、自動車業界は国内の新車需要減退に危機意識を高めている。超円高で輸出は採算割れとなっており、「日本で生産維持できるか、瀬戸際に立たされている」(志賀俊之日本自動車工業会会長)からだ。
7日に都内で行われた同フォーラムなどによる記者会見には。自工会の志賀会長や豊田章男副会長ら5人の正副会長が揃って出席した。また自動車総連からは西原浩一郎会長も参加し、税制に関する活動では初の労使首脳勢ぞろいとなった。
自動車労使がここまで危機感を強めているのは、過去最高値が続く円高により国内産業の空洞化がジワジワと進んでいるからだ。会見で豊田副会長は「空洞化という生易しいものでなく、すでに崩壊が始まっている」と語気を強めた。
◆国内市場はポテンシャルをもっている
自動車各社は、世界で戦える車両の先進技術や生産技術を今後も生み出すには、日本での一定の生産規模維持が生命線になると見ている。このため、トヨタ自動車が年300万台、日産自動車とホンダが100万台規模の国内生産を「死守」するとの方針を打ち出している。単に開発力の維持だけでなく、基幹産業として雇用の維持・創出に貢献すべきとの懸命な思いもある。
1ドル=70円台後半の超円高では、各社の輸出採算はとれず、国内生産の半数を占める輸出車両は軒並み赤字操業となっている。超円高によるモノづくりの崩壊に歯止めをかけるには、「(回復の)ポテンシャルをもっているのに税制が重荷となっている国内市場」(志賀会長)を活性化させうる環境整備が急務なのだ。
自工会の試算によると、価格180万円(税除く)の乗用車を日本での平均車両寿命である11年間使用した場合、取得・保有段階での税負担は欧州先進国の2.4倍から16倍に達する。米国との比較では実に50倍程度となる。
取得・保有段階での欧米各国の税体系がほぼ2税目とシンプルなのに比べ、日本は消費税、自動車取得税、自動車重量税、自動車税(または軽自動車税)と4税目にのぼっている。このうち、取得税については消費税と、また重量税は自動車税との2重課税になっている。
◆「空洞化対策減免税」として拡充を
さらに、取得税と重量税は道路整備の特定財源として創設されたにも拘わらず、09年度からは一般財源に鞍替えされた。過去のいきさつからは課税根拠が失われた税金であり、税制改革フォーラムは「確実な廃止」を訴えている。
このほかガソリンに課税される揮発油税などを含む多くが、税率の高い暫定税率のまま放置されているという問題もある。この暫定税率は09年の総選挙で、民主党がマニフェストに廃止を盛り込んだものだ。
来春に終わるエコカー減税は、取得税と重量税(新車購入時のみ)を環境性能によって減免する措置で、新車需要を下支えしてきた。少なくとも、数年先の消費税率引き上げを柱とする税の抜本改革までは、減免税措置の継続が必要である。でないと、現状の自動車生産はもたない。エコカー減税は、その名の通り環境対策の色合いが濃いものだったが、政府・与党は「空洞化対策減免税」としての維持・拡充に踏み込むべきだ。