トヨタ『86』は、トヨタ自動車と富士重工業の共同開発車としては、『ラクティス/トレジア』に続く第2弾になる。トヨタがこういったプロデューサー的立場になるのは珍しくはないが、今回はスポーツカーだけあって、エンジンなどの開発のプロセスは従来とは異なっていたようだ。製品企画本部でチーフエンジニアを務めた多田哲哉氏が教えてくれた。
「同じ水平対向4気筒でも、スバルが最近展開し始めた新世代エンジンとはまったく違います。当初は『あれを使ったらどうだ』という話から始まりましたが、もともとの狙いがスポーツエンジンじゃありませんから。だからボア・ストロークもまったく違います。ハチロクと呼んでいるもうひとつの理由もここにあって、ボアとストロークがどちらも86mmなんです。この数字はトヨタのスポーツエンジンの伝統なので外せませんでした」
たしかに『セリカ』や『MR2』に積まれた「3S-GE」、『スープラ』や『アリスト』が搭載した「2JZ-GE」はともに86mmスクエアである。こうしたスペックにまでこだわっていたとは、想像以上にエンスーなスポーツカーであるということができそうだ。
「製造設備も見直しました。水平対向はオイルが漏れるのは当たり前と言う人もいますが、それはトヨタでは許されないので、構造上難しいところはあるんですが。富士重さんからノウハウを公開してもらって、トヨタのクオリティで水平対向エンジンを作っています」
86のエンジンはスバルのブロックをベースにしつつ、D4-Sヘッドを装着したことで200ps/7000rpm。20.9kgm/6500rpmを発生。高回転まで気持ちよく回ることを目指したという。いままで感じたことのないようなサウンドやフィーリングが得られるのではないかと、多田氏は話す。