【エコプロダクツ11】1分で充電、キャパシタの奮闘---FDK

自動車 ビジネス 企業動向
ミルイラ(Takayanagi製)のシート下に4個のエネキャプテンを格納した様子。外観は鉛バッテリーと変わらない。
ミルイラ(Takayanagi製)のシート下に4個のエネキャプテンを格納した様子。外観は鉛バッテリーと変わらない。 全 4 枚 拡大写真

FDK(望月道正社長)が、エネキャプテン(EneCapTen)で、新しい蓄電デバイスの未来を切り開こうとしている。富士通グループの同社は、電池製品や電子部品を開発供給する創立61周年のメーカーだ。

17日まで開催されていた東京ビッグサイトの展示会「エコプロダクツ」には、エネキャプテンを搭載した小型電気自動車Takayanagi製『ミルイラ』のカットモデルが展示されていた。同社第一営業本部の担当者が、その特徴を話す。

「フル充電だと、鉛バッテリーでは12時間。でも、キャパシタなら1分で充電できる」

エネキャプテンは、大容量Li(リチウムイオン)キャパシタの商品名だ。キャパシタとはコンデンサのことで、日本では少容量のものをコンデンサ、大容量のものをキャパシタと言い分けることが多い。英語圏では小容量も大容量もキャパシタと呼ばれる。一般には電子基板などに組み込まれた小容量のものがおなじみだ。

ミルイラに搭載されたエネキャプテンは、1セル(A5サイズ)3.8Vのキャパシタを12枚重ねて45V、乗用車の標準バッテリーと同じような形状である。同社が目指すのは電気自動車や電車への採用だ。

この素早い蓄電性能を活かせば「将来的にスーパーやコンビニなどいろんなところに電気スタンドが設置されるようになれば、ちょっとした買い物の時間で充電を完了することができる」(担当者)

エネキャプテンは、大電流の急速充放電が可能。しかも、長寿命で、高い温度負荷特性が特徴だ。

セルベースの体積比で鉛蓄電池の300%の出力性能を備える。電池のように化学反応を伴わないので、メンテナンスフリーで10万サイクル以上、標準的な仕様では約50万サイクルの使用に耐える。標準的なLi電池は6000サイクル程度で劣化が始まる。

また、高温負荷特性は、他の蓄電池より20度以上高く、摂氏80度で安定して使うことができる。

エネキャプテンは、まるで蓄電池の弱点を克服したかのような可能性を秘めているのだ。ただ、理想のエネキャプテンにも唯一の課題がある。それが電力蓄積容量だ。

エネキャプテンは鉛蓄電池と比較するとセルベース体積比で30%の電力蓄積容量しかない。前述のミルイラで、鉛蓄電池6個を積んだ通常モデルと、エネキャプテン8個を積んだ場合の比較を、再び担当者に解説してもらうと、こうなる。

「鉛電池で12時間充電して35km走るか、エネキャプテンで1分充電して5km走るか」

車両の積載スペースには限りがあるため、キャパシタで航続距離を保とうとすると限界がある。このため現在は、太陽光や風力など自然エネルギーによる発電の安定化や、病院の非常用電源など、積載スペースに制約のない場所で使われることが多い。

ただ、マイカーの平均的な航続距離は1日20km程度と意外と短い。超小型モビリティの可能性も官民で模索されている。Li電池と組み合わせて使えば、Li電池の寿命も延びるという効果もある。エネキャプテンは、未来のEV化に可能性を与える力強いデバイスとなるはずだ。

《中島みなみ》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 車検NGの落とし穴!? シート交換で絶対に知っておくべき新ルール~カスタムHOW TO~
  2. トヨタの大型ピックアップトラックの逆輸入に期待? 新型発表に日本のファンも熱視線
  3. 次期BMW『X5』の車内を激写! メーターパネル廃止、全く新しいパノラミックiDriveディスプレイを搭載
  4. ホンダ『CB1000F SE コンセプト』を世界初披露! カウルが付いてネオレトロ感アップ、MSショーからの変更点もチェック!
  5. 自動車購入の落とし穴! 公取協・公取委の警告から学ぶ
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  3. ブレンボが新ブレーキ開発、粒子状物質を削減…寿命も最大2倍に
  4. スズキ初のBEVはなぜ「軽EV」じゃない?『eビターラ』開発者が語る「EVの悪循環」と「スズキの強み」
  5. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
ランキングをもっと見る