【トヨタ アクア 試乗】軽さが生むエコの爽快感は プリウス をしのぐ…井元康一郎

試乗記 国産車
トヨタ・アクア
トヨタ・アクア 全 12 枚 拡大写真

2011年12月26日の発売後、1か月間の受注台数が実に12万台に達したトヨタ自動車の新型コンパクトハイブリッド『アクア』。千葉・幕張を拠点に一般道、高速道を交えたコースを、ビッグマイナーが行われた『プリウス』と比較しながらテストドライブをする機会を得た。

アクアの走行フィールの最大の特徴は「軽さ」だろう。アクアは上位モデルのプリウスと同じ方式の2モーター式ストロングハイブリッドシステムを持っているが、車体もハイブリッドシステムも小さいため、車両重量はプリウスの売れ筋グレード「S」に対して270kgも軽い1080kg。この重量差が、アクアの走行フィールをプリウスと異なるものにしている。

エンジン、動力用モーターの出力およびトルクはプリウスより2割がた小さいのだが、重量が軽いため、スロットルを踏んだ時にホイールがスルッと軽く回転しはじめる感覚だ。アクア試乗後にプリウスで市街地を走ってみたが、ハイグリップタイヤを履いた「G's」バージョンであったことを差し引いても重ったるく感じられた。いまだ第一級の燃費性能を持っているし、マイナーチェンジで静粛性や乗り心地が大きく改善されているが、アクアに乗った後では「もっとスマートになれるだろうに」と思われてしまうのも確かだった。

もともと現行プリウスは開発段階で北米での商品力をアップさせるために車体を大型化するという商品計画上の制約があり、重量増を跳ね返して燃費の世界トップランナーを目指したモデルだった。それに対して新規モデルのアクアは「2020年のファミリーカーのあるべき姿を目指した。燃費や使い勝手、快適性など多くの面で最高のものを目指す難しさはあったが、過去のしがらみがないぶん、いろいろなことを思い切ってやれた」(アクアのチーフエンジニア・小木曽聡氏)という。

無駄な部分は徹底的にそぎ落とし、必要なものはきっちり盛っていくクルマ作りが行われたのがアクアなのだ。見た目の先進性はプリウスのほうがあるが、トヨタが初代プリウス以来追求し続けた“究極のエコカー作り”のスピリットを色濃く継承したのはむしろアクアだと感じられた。

発進加速時や一般道での巡航時にとくに強く感じられる転がり抵抗の少なさは、エコドライブに興味のあるドライバーにはとても心地よく感じられることだろう。また、発進時に「あれ?思ったより加速しないな」とアクセルを必要以上に踏み込む機会が減る分、エコドライブスキルがあまり高くないドライバーでもコンスタントに良好な燃費を出せそうだ。

試乗時は信号の変わり目に気を配る以外、あまり細やかなエコ運転はしなかったが、オンボードコンピュータ上に表示された燃費は市街地走行がノーマルモード時22.5km/リットル、エコモード時で31.2km/リットルと良好。ノーマルモードの数値が低いが、慣れればもっと良い燃費を出せそうな雰囲気だった。高速燃費は東関東自動車道を第二走行車線、追い越し車線を優速気味に走って19.2km/リットル。こちらも悪くはないが、クリーンディーゼルモデルに対してはやや劣勢か。

井元康一郎
鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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