2011年度販売電力量、横ばいの見込み…富士経済まとめ

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ガスタービンコンバインドサイクル発電を採用する東京電力千葉火力発電所
ガスタービンコンバインドサイクル発電を採用する東京電力千葉火力発電所 全 1 枚 拡大写真

富士経済は、電力やガスのエネルギー自由化市場と、EMS(エネルギー・マネジメント・システム)などのエネルギーサービス市場を調査し、結果を調査報告書「電力・ガス・エネルギーサービス市場戦略総調査2012」にまとめた。

福島原子力発電所の事故とそれをきっかけとした全国の原子力発電所の再稼働延期により、エネルギーインフラの機能が制限され、特に電力供給への影響は甚大となっている。供給不安を受けて需要家側でも節電への取り組みを強化するなど、供給側・需要側共に市場環境が激変しており、今回8~12月にかけて、各市場の現状を調べた。

調査結果によると電力市場は電力小売市場の自由化が2001年から段階的に実施され、現在は特別高圧分野と高圧分野を合わせて電力需要全体の60%近くが自由化されている。

一般電気事業者以外の特定規模電気事業者(PPS)による2010年度の販売電力量は、199億6000万kWhで、前年度比で30%増となった。最大手のエネットや、2010年度から本格的に事業を拡大した日本テクノ、オリックスなどが小口顧客の開拓を進めたことから、市場が大きく伸長した。

また、需要家PPSの参入が相次いだことも追い風となった。それでもPPSのシェアは依然として僅かで、2010年度の実績では電力需要全体の2%、自由化対象範囲では3.5%にとどまる。

2011年度は東日本大震災による発電所の損壊や全国の原子力発電所の再稼働延期などにより、一般電気事業者の電力供給力が懸念されたことから、PPSへの切り替えについて問い合わせが殺到した。しかし、全国的な電力需給の逼迫から、PPSでも安価で安定的な電力の調達が困難になっており、新規顧客の獲得から既存顧客への安定供給へ事業の軸足をシフトさせている。

また、夏季の大口需要家への節電要請などにより、特に特別高圧分野での販売電力量が減少しており、2011年度の電力販売量は、ほぼ横ばいの200億6000万kWhになると見られる。

電力需給の逼迫は長期化する見通しで、電力価格の高止まりや燃料価格の高騰などによる電力調達難は続くと見られ、PPSのトレンドは「攻め」から「守り」へと変化していると指摘する。

ガス市場は、ガス販売の自由化が1995年から段階的に対象範囲が拡大され、新規参入事業者でもある電力会社の中には、原子力発電所の稼働停止に伴ってLNGを発電用で使用するために新規顧客獲得を抑えるケースも見られる。

LNG火力発電の燃料需要の増大により、電力会社とガス会社の間でエネルギーセキュリティの確保に向けた連携が強化されている。ガスインフラの整備では、東京電力が急きょ建設を決定した鹿島火力発電所の新規発電設備まで、東京ガスが建設中のパイプラインを延伸することを決定した。

LNGは、東南アジアを中心とした産ガス国のガス需要増や、欧州主要国の原子力発電所停止に伴う需要増加が見込まれる一方で、豪州を中心としたガス田の新規プロジェクトの生産開始が2015年前後であり、米国のシェールガスなどをはじめとする非在来型ガスも輸出段階に達していないことから、LNG需給の逼迫と価格上昇を予測する。

国内のエネルギー事業者は、在来型・非在来型問わず、ガス田の権益取得を進めることで供給面や価格面におけるエネルギー供給の安定性向上を進めている。

節電対策システム市場は、緊急の節電・停電対策として注目された自家発電システム、ガスヒートポンプエアコン(GHP)、電力モニタ、デマンド監視装置などがある。2011年は節電特需により市場が大きく拡大したと見込まれるが、2012年以降は需要も落ち着き、2015年には2011年の市場規模を大きく下回ると予測する。

特に自家発電システムやGHPは、ピークカットや停電対策としてランニングコストなどの採算性を度外視して設置されたケースも多く、市場の縮小規模も大きいと予想する。

EMS市場では、ASP/SaaS型EMSは納期が短く安価で簡易であることから、短期的な節電対策の一つとして導入が進み、2011年は前年比72%増を見込む。BAS/BEMSは、BASの主な導入先となるオフィスビルなどの中・大規模施設で、着工済案件の一時中断や新設計画の延期・凍結などが相次いだことから2011年は市場縮小が見込まれる。

ただ、リプレイス中心の市場であることから需要は底堅く、継続的な節電ニーズやBEMSの補助金制度などを追い風に、今後は市場拡大が予測されるとしている。

節電への取組み強化により、エネルギー管理士のような専門家、テナント入居企業の総務担当など、専門知識を持たないユーザーがエネルギー管理を行うようになっている。今後は見える化などの現状把握から踏み込んだ、運用改善に向けたコンサルティングや設備機器のチューニングなどの提供サービスの拡充とともに、EMS市場の拡大を予測する。

《レスポンス編集部》

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