【池原照雄の単眼複眼】トヨタとホンダ、中国でマーケットイン鮮明に

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トヨタ・ユンドンショワンチン(北京モーターショー12)
トヨタ・ユンドンショワンチン(北京モーターショー12) 全 5 枚 拡大写真

環境の中核技術を移植

中国市場での出遅れ感が否めないトヨタ自動車とホンダが、4月に開催された北京モーターショー(オートチャイナ2012)で、反転攻勢を鮮明に打ち出した。両社の構えに共通するのは、マーケットインの徹底だ。専用モデルの開発にとどまらず、開発体制そのものも現地化を推進し、最大市場に深く入り込んでいく。

「もっといいクルマ」が本格始動

トヨタは、北京ショーで世界初公開となるワールドプレミアを3台出展した。中国専用HV(ハイブリッド車)のコンセプト『ユンドンショワンチン(雲動双撃)』と、スモールクラスのグローバル車コンセプト『チン』のセダンとハッチバックだ。

専用HVは、11年4月に事業開始した江蘇省常熟市の研究開発センター(TMEC)が開発を進めているモーターや電池などのHVコンポーネントを搭載し、15年に発売する。トヨタの環境分野の中核技術を移植し、中国に適したHVやPHV(プラグインハイブリッド車)の開発につなげる。

常熟市のTMECは、トヨタにとっては世界最大規模となるテストコースも建設中。“クルマは道がつくる”が持論の豊田章男社長は、「テストコースでは中国のあらゆる道を再現して徹底的に走らせ、満足いただけるクルマ」に仕上げたいという。就任以来、繰り返してきた「もっといいクルマ」づくりが、中国でも本格的に動き出したという印象だ。

チンは13年には生産開始する現実的なモデルであり、セダンは一汽トヨタから、ハッチバックは広汽トヨタから売り出される。ワールドカーとしての育成を狙うモデルだが、「中国発」で生産・販売に着手するところにも、このマーケットを重視するトヨタの意向がにじみ出ている。

中国の女性デザイナーによる衝撃のライン

北京ショー直前に、15年の中国での販売を11年比で倍増させるという中期方針を発表したホンダも、インパクトのあるワールドプレミア2種を発表した。『アコード』より小ぶりのミドルクラスセダン『コンセプトC』と、『シビック』をベースにしたミニバンの『コンセプトS』であり、いずれも13年に中国で生産し発売する。

コンセプトCは中国向けのモデルで、30代前半の女性中国人デザイナーらが主体的にデザインした。伊東孝紳社長は、「驚いた。これが中国で(専用モデルを)やっていくことなんだと思った」と、日本で初めてモックアップを見た時の、印象を振り返った。「日本の研究所では出てこないライン」との衝撃も受けたという。

一方のコンセプトSは、「日本では『ストリーム』に相当する商品であり、中国で立ち上げた後に世界市場に投入する初めてのケースになる」(伊東社長)。トヨタのチン同様に、中国市場から育てるグローバルカーというわけだ。

マーケットインで中国での巻き返しなるか

トヨタとホンダのマーケットインは緒に就いたばかりだが、日本メーカーでは『サニー』などの専用モデルで先行した日産自動車というお手本もある。猛者がひしめく中国での巻き返しは容易ではないものの、これを乗り切らないと2020年代に向けた持続的な成長はおぼつかない。

《池原照雄》

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